燃料タンクローリーの運転手不足で給油所への供給が滞っている問題で、英政府は27日、石油業界に対する競争法の適用を一時停止すると発表した。自動車燃料の適所供給に向け、企業間で情報を共有できるようにするため。英国ではここ数日、ガソリン・軽油の「パニック買い」による混乱が続いている。
クワーテング民間企業・エネルギー・産業戦略相はこの措置について「政府が燃料メーカーや卸売業者、配送業者、給油所と建設的に協力する」ことにより、「燃料を最も必要とする地域や戦略的地点に優先的に供給する」ことが目的と説明している。
英国・オランダ資本の石油メジャー、ロイヤル・ダッチ・シェルや米国の同業エクソンモービル、英国の同業BPを含む自動車燃料業界は「供給逼迫(ひっぱく)は国内の燃料不足によるものではなく、一時的な消費者需要の急増が原因」と強調している。
BBC電子版によると、英国では数日前から都市部を中心に、燃料供給不足を懸念するドライバーが給油所に殺到し、給油待ちの車が列を作った。石油小売業者協会によると、石油企業は高速道路沿いやスーパー併設の給油所に優先的に供給しており、独立系の給油所では全体の50~85%でガソリン・軽油が底をついている。
フィナンシャル・タイムズによれば、ジョンソン首相はタンクローリーの運転手不足に対処するため、軍の協力を仰ぐことも検討している。
英国ではかねて、大型トラックの運転手不足により、食品や医薬品などさまざまな業界にも影響が生じている。
■トラック運転手に短期ビザ
政府は25日、外国人のトラック運転手最大5,000人に一時的なビザ(査証)を発給すると発表した。大型トラックの運転手不足を受けた措置の一環で、ほかにも国内で最大4,000人のトラック免許取得希望者を対象とした短期集中訓練を実施する案や、第一線を退いている運転手約100万人に復帰を促す書簡を送付する案を打ち出している。
英国では欧州連合(EU)離脱と新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により推定2万人の大型トラック運転手がEU域内に帰国したほか、パンデミックの影響で運転免許試験が停止していたこともあり、9万人の人材が不足しているとされる。
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