英国の欧州連合(EU)離脱に絡み、欧米自動車大手ステランティスが英国の工場を閉鎖する可能性を示唆している。新たな関税ルールが適用されれば国内で組み立てた電気自動車(EV)の競争力の低下が見込まれるためで、政府に対してEUと通商協定の再交渉を行うよう求めた。BBC電子版などが17日伝えた。
既存の通商協定では、2024年以降は部品や原材料の45%以上を英国またはEU域内で調達していない車両は、英国からEU単一市場に輸出する際に関税が生じる。この割合は、27年には65%に引き上げられることが決まっている。
ステランティスはこれについて、英国ではEV用バッテリーが生産されておらず国内調達が不可能なため、英国で組み立てるEVの大半が関税の対象になる可能性があると指摘。また、原材料費やエネルギー価格、人件費の上昇のために生産コストも拡大しており、このままでは英国にある工場の閉鎖は避けられないと述べている。
ステランティスは今回、英政府にEUと通商協定の再交渉を行うよう要請。原産国に関するルールの適用開始を27年まで遅らせるよう求めた。また米国の自動車大手フォード・モーターも、やはり新たなルールの適用開始を先送りするよう求める声明を出している。
政府報道官は今回の動きに対し、既にこの問題への対応策を巡るEUとの協議を開始したと説明。ステランティスやフォードには、英国の自動車産業の優位性を訴えていく考えを示した。
ステランティスは21年、傘下の英ボクソールがイングランド北西部のエルズミアポート(Ellesmere Port)に保有する工場を、グループ初の電気自動車(EV)専用工場に転換する計画を明らかにした。フォードは昨年末、イングランド北西部リバプール近郊のヘイルウッド(Halewood)工場に1億2,500万ポンドの追加投資を行うことを決めている。
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