英国政府は21日、英国の欧州連合(EU)離脱協定に含まれる「北アイルランド国境問題にかかわる議定書」の大幅な見直しを求める方針を示した。同議定書は北アイルランドに多大な負担を課しており、緊急停止条項を発動する正当な理由もあるとしている。ただ、現時点での同条項の発動は見合わせ、EUに緊急協議の開始と、施行停止期間の設定を求めるとしている。
EUとの離脱交渉の責任者を務めたフロスト内閣府担当相はこの日、上院で同議定書を巡る政府方針を説明。その中で、「北アイルランドでは政情の過熱や抗議デモ、時には暴動まで起きている」とし、同議定書を完全に施行するべきではないとの考えを示した。EUとの協力による解決を試みたものの、問題の核心に踏み込む協議は行われなかったとしている。
同相は、こうした状況を考慮すれば、同議定書の一部を緊急停止する第16条の発動も正当化されるとした上で、「政府は、今はその時ではないとの結論に達した」と説明。EUに対し同議定書の見直しに関する緊急協議を求める方針を示した。
同議定書では、アイルランドと北アイルランドの間の国境検査を避けるため、英国のEU離脱後も北アイルランドは単一市場にとどめられている。このため、9月末に一連の猶予期間が期限を迎えれば、英国と北アイルランドの間の物品のやりとりに一定の通関検査が発生するほか、EUの輸入禁止対象である冷蔵肉製品が英本土から北アイルランドに出荷できなくなるなど、さまざまな影響が生じると予想されている。
北アイルランドでは、同議定書に対する親英派の不満が高まり、4月に新英派の若者による暴動が発生したほか、フォスター前首相は、英政府との交渉に失敗したとの批判を受け辞任に追い込まれた。[EU規制]
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