日英両政府は23日、日英経済連携協定(EPA)を締結した。東京で調印式が行われ、茂木外相とトラス国際貿易相が署名した。同協定は両国の批准手続きを経て、来年1月1日に発効される見通し。英国が欧州連合(EU)離脱後に主要な貿易相手国との自由貿易協定を結ぶのは初めて。
両国は6月9日に自由貿易交渉を開始。日・EU間のEPAを土台に協議を進め、9月に大筋合意に達していた。英国のEU離脱後の移行期間が終了する12月31日までに新協定が発効しなければ、来年1月1日以降は日英間の貿易に世界貿易機関(WTO)のルールに基づく関税や輸入量の割り当てが導入される。両国はこうした事態を避けるため、交渉開始から4カ月半という異例のスピードで署名を実現させた格好だ。
茂木外相は調印式後の記者会見で、「本協定を締結することにより、日・EU・EPAの下で日本が得ていた利益を継続し、日系企業のビジネスの継続性を確保できる」とコメント。一方、トラス国際貿易相は「日英EPAの締結により、英国の独立した貿易国としての手腕が示された」と強調。同協定は、日・EU間の協定の域を超え、英国の企業や国民に利益をもたらすとしている。
日英EPAでは、日EU・EPAに基づく英市場へのアクセスや関税率を維持する一方、電子商取引(eコマース)や金融サービス、競争政策、ジェンダーなどでは、より先進的なルールを規定している。
日本にとっては、鉄道車両や自動車部品などで英市場へのアクセスを改善。また、原産地規則でEU製の部品を日本の原産品として認める「拡張累積」が導入されたため、日本のメーカーがEU製の部品を使った製品を英国に輸出する場合も、これまで通り特恵関税が適用される。英国にとっては、かねて求めていたチーズなど農産品の輸入拡大は実現しなかった。一方、英国の金融サービス企業の日本での事業免許取得手続きは簡素化されている。
なお、英国はかねて日英EPAを足掛かりとして、日本やカナダ、オーストラリアなど11カ国から成る「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、通称TPP11)」に参加する意欲を示している。これに向け、9月には正式な参加交渉の準備段階となる参加11カ国との協議に着手した。
茂木外相は今回、「英国のTPP11参加への関心を歓迎したい」とあらためて表明。来年は日本がTPP11の議長国となることから、情報提供など様々な形で英国の参加を後押しする方針を示した。
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