英政府は9日、昨年10月に欧州連合(EU)と締結したEU離脱協定に意図的に反する国内市場法案を議会に提出した。移行期間の終了後、国内各地域間で円滑な通商を維持する狙いだが、離脱協定で定められた北アイルランドに関する議定書の一部を無効とする条項を含む。欧州委員会はこれに懸念を示し、英政府に臨時会合を求めている。
北アイルランドに関する議定書は、移行期間終了後も北アイルランドをEU単一市場にとどめるための措置。その結果、北アイルランドと英本土の間では一定の検査や手続きが必要となる見通しだが、国内市場法案には、北アイルランドから英本土に流入する製品については新たな検査を行わないと定めている。
また同法案には、英・EU間の貿易協定がまとまらなかった場合に発効するはずのモノの移動に関するルールや、企業に対する国家補助の取り決めを、英政府が無効化する権限も含まれている。しかもその文面には、こうした権限は国際法に反しても適用されるべきと明記されている。
ジョンソン首相は下院での答弁で、「英国の統一を維持すると同時に、北アイルランド和平合意を守ることが私の仕事」とした上で、「そのためには、北アイルランドに関する議定書が極端あるいは不合理に解釈され、北アイルランドと英本土の間に国境線が引かれるような事態から英国を守る安全措置が必要」と訴えた。
これに対し、フォンデアライエン欧州委員長は「英政府が離脱協定に違反する意志を明らかにしたことを非常に懸念している」とコメント。「こうした行為は国際法に反し、信頼を損なう」と話している。
同法案を巡っては、与党・保守党内からも英国の評価に傷がつくとの懸念の声が上がっている。最大野党・労働党の広報担当者によると、同党は同法案に重大な懸念を抱き、修正の可能性を探っている。[EU規制]
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