英政府は19日、ポイント制の新移民制度を公表した。技能や資格、賃金、職業に基づき所定のポイント数に達した申請者にのみ就労ビザ(査証)を交付する。欧州連合(EU)離脱に伴いヒトの自由な移動を制限するための措置で、2021年1月1日に導入される。EU域内からの低技能労働者に頼る業界では、人手不足が懸念されている。
新制度では、国内で就職先が決まっていることが就労ビザ申請の必須要件となる。また、年収の基準は2万5,600ポンド以上、学歴は大学入学レベルを示す一般教育修了上級レベル(Aレベル)と同等以上とされている。これらは、これまで無条件で就労が認められていたEU市民にも適用される一方、年収と学歴については現行のそれぞれ最低3万ポンド、大学卒以上から基準が緩和されている。また、年収はこの基準に満たなくても人手不足の職種などでは2万480ポンド以上なら申請が認められる。
新制度では、ビザの交付を受けるためには計70ポイントが必要。「認可されたスポンサー企業での採用」や「適切な技能レベルの仕事」、「人手不足の職種の仕事」に20ポイントが付与される。「要求水準を満たす英語能力」は10ポイント。年収については、2万5,600ポンド以上なら20ポイント、2万3,040ポンド以上なら10ポイントが与えられ、2万480ポンド以上は0ポイント。学歴については、仕事に関わる分野の博士号には10ポイント、STEM(科学・技術・工学・数学)分野の博士号には20ポイントが付与される。
政府は、現在英国で就労するEU出身者の7割が新制度では必要なポイント数が獲得できないとみている。既に英国に居住し、EU市民向けの永住権付与制度に申請した320万人には影響はないものの、新制度の導入により将来的にEUからの移民数を削減できると見込む。
これに対し、国内最大の公務員労組ユニゾンは、新制度はソーシャルケア業界に「壊滅的影響」を及ぼすと警告する。また、英産業連盟(CBI)のキャロリン・フェアバーン事務局長も、一部業界の企業は人材確保に「頭を抱えることになる」と予想。「既に失業率が低水準で推移する中、介護や建設、ホスピタリティー、飲食関係の企業が最も大きな影響を被る」とみている。[労務]
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