英下院(定数650)は16日、内閣不信任案を反対325票、賛成306票で否決した。不信任案は、メイ首相が欧州連合(EU)と合意した離脱協定が15日に230票差の歴史的大差で否決されたことを受け、最大野党・労働党のコービン党首が提出したもの。政権奪取に向けた解散総選挙を狙ったが、離脱協定に反対した与党・保守党のEU離脱強硬派と同党に閣外協力する北アイルランド・民主統一党(DUP)が共にメイ首相を支持したため、倒閣は実現しなかった。
不信任案は労働党のほか、スコットランド独立党(SNP)と自由民主党、ウェールズ党、緑の党の4野党も支持した。一方、保守党は前日のEU離脱協定の採決で118人の造反議員を出したが、不信任決議での造反者は皆無だった。DUPは10人の議員全員が不信任案に反対した。
コービン党首は投票に先立つ演説で、「メイ政権は英国が直面する最も重要な問題で議会の支持を得ていない」指摘。「過去のどの首相も、こうした状況では辞任し、総選挙を実施したはずだ」と訴えた。これに対しメイ首相は、「総選挙は国益に反する」と主張。「団結が必要な時に分裂を深め、確実さが必要な時に混乱をもたらす」と批判していた。
メイ政権はDUPの閣外協力を得てかろうじて議会で過半数を維持しているため、不信任案に対する賛否の票差はわずか19票だったが、3月29日のEU離脱を間近に控える中、首相の交代や解散総選挙の実施などさらなる混乱を引き起こす状況は免れた格好だ。
内閣不信任案が否決されたことを受け、メイ首相はブレグジットを遂行するため引き続き首相職を全うするとあらためて強調。ブレグジットの達成に向け、あらゆる政党のリーダーと「建設的な精神」の下で個別に協議する用意があると呼び掛けた。「この議会において、交渉可能で十分な支持が得られる解決策を見つけなければならない」と事態の打開に意欲を見せており、この日夜から協議を開始する方針を示した。
英国内におけるこう着状態を受けて、英国とEUの双方からEU離脱を延期する必要があるとの声が高まっているが、メイ首相は予定通りの日程で離脱を実施する方針を崩していない。同首相は、EU離脱協定の否決を受けた今後の方針を21日に下院に提案する予定。
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