欧州委員会は15日、英国が欧州連合(EU)離脱協定に含まれる「北アイルランド国境問題にかかわる議定書」の大部分を履行していないとして、同国に対する法的措置を開始したと発表した。英国が同議定書の一部を一方的に破棄する法案を議会に提出したことを受けた措置。
EU側の交渉を担当する欧州委のシェフチョビッチ副委員長(機関間関係・先見性担当)は、「国際協定を一方的に変更することに、法的、政治的な正当性はまったくない」と批判。英国政府による同法案の提出は、国際法に反する違法行為で、英・EU間の相互の信頼と敬意を激しく損なうと訴えている。
欧州委は2021年3月、英国が同議定書の履行を一方的に変更したとして法的手続きを開始したが、交渉による解決を優先し、その後に停止していた。同委は今回、この手続きを再開するとともに、英国が貿易データの共有と通関検査施設の設置を怠ったとして、2件の新たな法的手続きを開始した。
欧州委は、英国が2カ月以内に回答しなければ、欧州司法裁判所への提訴を検討するとしている。この結果、英国は同裁判所から罰金を科される可能性もある。ただ、シェフショビッチ氏は交渉により解決策を見いだす道を残すとし、英国の議会で同法案が可決されるかどうかを見守るとしている。
北アイルランド議定書では、アイルランドと北アイルランドの間に厳格な国境を設けることを避けるため、英国のEU離脱後も北アイルランドがEUの単一市場にとどまることになっている。この結果、英本土と北アイルランドの間の物品のやりとりには一定の通関検査が発生し、北アイルランドの企業や住民に影響が生じている。
英国政府が提出した法案は、英本土から北アイルランドへの物品の流れを円滑にするため、北アイルランド内で消費される製品向けの通関検査をなくす内容。こうした製品についてはEUではなく英国の製品基準の適用を認めるとしている。加えて、紛争処理の管轄権を欧州司法裁判所から独立の仲裁機関に移すことや、北アイルランドに英本土と同じ税制や国家補助規則を適用することも盛り込まれている。[EU規制]
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。