英国の議会が10日開会し、体調不良のエリザベス女王の代理としてチャールズ皇太子が政府の作成した施政方針演説の原稿を読み上げた。演説では、地域格差の解消や欧州連合(EU)離脱によって得られる機会の活用などに向けた38法案の概要が紹介された。経済成長を促すことにより生活費高騰の打撃を緩和する方針が打ち出され、野党が求める直接的な家計支援策は盛り込まれなかった。
チャールズ皇太子は演説の中で「政府の優先課題は、経済の成長・強化と生活コストの軽減を促すこと」と説明。「経済成長を促すことにより、生活水準を引き上げ、公共サービスへの持続的投資に向けた資金を調達する」とし、「その基盤として公共財政に対し責任ある姿勢を取り、債務削減と税制改革および減税に取り組む」と述べた。
地域格差解消に向けては、地方の雇用拡大や住宅開発を促す「レベリングアップおよび再生法案」が紹介された。
EU離脱関連では、EU法から国内法化された法律の抜本的見直しに向けた「ブレグジット自由法案」や、欧州人権条約に基づく「人権法」に替わる「権利章典法案」が打ち出されている。
このほか、インフラ関連では、鉄道網の運営を一元的に管理する公的機関「グレート・ブリティッシュ・レールウェイ(GBR)」を新設する「運輸法案」や、クリーンエネルギーの開発を促す「エネルギー安全保障法案」、資本金220億ポンドのインフラ銀行を新設する「英国インフラ銀行法案」などが盛り込まれた。
また、金融サービス規制を整備する「金融サービス・市場法案」や、データ保護制度を見直す「データ改革法案」なども含まれている。一方、巨大テクノロジー企業の取り締まりに向けた「デジタル市場・競争・消費者法案」については、草案が示されるにとどまった。
なお、議会開会時の施政方針演説は通常、女王が行うが、今回は一時的に体を動かすことに困難が生じているとして、チャールズ皇太子に託された。エリザベス女王が議会開会式を欠席するのは、妊娠中だった1963年以降で初めて。女王は先に96歳の誕生日を迎えたが、ここ2、3カ月は行事を欠席することが増えている。
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