英政府は15日、オーストラリアと自由貿易協定(FTA)を巡り大筋合意したと発表した。英国にとって、欧州連合(EU)離脱後の通商政策のモデルになるとみられている。自動車やスコッチウイスキーなどの英国製品をより安くオーストラリアに輸出できるようになる一方で、英国の農家からは輸入牛肉・羊肉などとの価格競争に対する懸念の声が上がっている。
このFTAは、英国がEUを離脱した後で交渉を開始した初めての貿易協定。英政府は、今回の合意が「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP、通称TPP11)」加盟への重要な一歩で、CPTPPは英国の農家に大きな機会を与えるものと期待している。
ただ、オーストラリアとのFTAを巡っては、農業関係者から、英国の食品基準の低下につながる恐れが指摘されている。オーストラリアでは、英国で使用が禁止されている肥育ホルモン剤や殺虫剤、食品添加物の使用が認められており、政府内でもユースティス環境・食料・農村地域相とトラス国際貿易相の間で意見が対立している。
また、牛肉や羊肉、砂糖などに関税と輸入割当が適用されなくなれば、英国内の農家は大打撃を受けると懸念する声もある。これに対し英政府は、今後15年間は移行期間として、無関税輸入量に上限を設けると説明している。
専門家は、オーストラリアに対する譲歩内容が、今後のEUや米国との貿易交渉の基準を形成すると指摘している。
英国とオーストラリア間の2019/20年の物品・サービスの貿易高は約201億ポンド。 英国はオーストラリアの貿易相手国としては8番目で、オーストラリアは英国にとって20番目。オーストラリアから英国への輸出量が多いのは金属やワイン、機械で、英国からは自動車や医薬品、酒類を主に輸出している。
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。