英国のサービス輸出高が欧州連合(EU)離脱決定以降の4年間で1,100億ポンド超縮小していたことが、英アストン大学経営大学院の研究者の調査で明らかとなった。年間サービス輸出高の約1割相当がブレグジットの影響により失われた格好となる。
研究者らは、IT(情報技術)や金融などのサービス産業の輸出高について、ブレグジットを巡る国民投票が実施された16年6月以前の傾向が続いた場合の予想値と、実際の数値を比較。その結果、19年末までに累計で1,130億ポンドの格差が生じていたことが分かった。
この数値には20年に始まった新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響は含まれていない。研究者らは、パンデミックが世界貿易に響いていることは事実だが、英国がEU域外での競争力を強化しない限り、パンデミック収束後も状況は改善しないと警告している。
一方、アイルランドのサービス輸出高は同じ期間に1,260億ポンド拡大した。16年以前の水準から24%増加した格好となる。他のEU加盟国ではこうした増加は見られないため、アイルランドのサービス産業がブレグジットの恩恵を最も受けていることが伺える。背景には、同国への本社移転やEU単一市場へのアクセスを求める企業が英国ではなく同国経由で取引を行うようになったことがあるとみられる。
同大学のジュン・ドゥ教授は調査結果について「英国のサービス貿易への打撃と、経済や雇用へのその波及が深刻に懸念される」とコメント。データ共有や、金融サービス事業の「パスポート制度」を巡っては困難な交渉が予想されるとした上で、「サービス貿易の損失を回避するためには、これらの分野でEUとできるだけ緊密な関係を目指すべき」と指摘している。
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