英政府は3日、英国と英領北アイルランドの間でやり取りされる物品の通関検査の免除期間を一方的に延長すると発表した。通関検査は、欧州連合(EU)離脱協定に含まれる「北アイルランド国境問題にかかわる議定書」で定められたもので、現在は移行措置として免除されているが、一部の分野では3月末に免除期間が終了する予定だった。EUは英国の措置を「協定違反」として強く批判している。
同議定書では、アイルランドと北アイルランドの間の国境検査を避けるため、英国のEU離脱後も北アイルランドが単一市場にとどめられている。このため、移行措置が終了すれば英国と北アイルランドの間の物品のやり取りに一定の通関検査が必要となるが、英小売業界などからは移行措置の延長を求める声が上がっていた。これを受け、英国はEUに免除期間の2年間延長を要請したものの、EUは拒否していた。
英国のルイス北アイルランド相はこの日、下院で発表した声明で「要件を満たすのに必要な時間を企業に与え、英国と北アイルランド間の円滑な物流を促す」ため、スーパーとその納入業者を対象に、農産物の安全証明義務の適用免除を10月1日まで延長すると発表した。その後、「デジタル支援スキーム」の展開と並行して、段階的に新たな通関手続きを導入するとしている。
英・EU間の協定の管理を手掛ける「共同パートナーシップ評議会(JPC)」の英国側の代表に就任したフロスト内閣府担当相はこの日、EU側の代表を務める欧州委員会のシェフショビッチ副委員長と電話で会談。「同議定書が北アイルランド市民の生活に及ぼす直接的な打撃に早急に対処する必要がある」と訴えるとともに、今回の措置は「一時的かつ専門的」なもので、「JPCで建設的な協議を行う時間を確保するのに必要な最低限の措置だ」と説明した。
これに対しシェフショビッチ氏は、英国の一方的措置は「北アイルランド議定書の本質的な規定に反する」と批判。「欧州委員会は離脱協定および対英通商協定に定められた法的手段に基づいて対応する」としている。
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