ジョンソン英首相とフォンデアライエン欧州委員長は9日夜、ブリュッセルで会談し、英・欧州連合(EU)間の将来的な関係を巡る交渉の打開を図ったものの、溝は埋まらなかった。両首脳は、事務レベルによる交渉を直ちに再開した上で、13日までに最終的な決断を下すとしている。欧州委員会は10日、英国との合意がまとまらなかった場合の緊急措置を発表した。
夕食を取りながらの会談は3時間で終了し、共同声明は出されなかった。英首相官邸の報道官は会談後「両者間には依然として極めて大きな溝が残る」とコメント。「両首脳は交渉の今後の行方について、13日までに断固とした決断を下す必要があるとの点で一致した」と話した。
また、フォンデアライエン委員長は会談後の声明で「双方が互いの立場を明確に理解したが、それぞれの立場はなお大きくかけ離れている」と説明。「交渉団を直ちに再招集し、重要問題の解決に努めるべきとの点で合意した」としている。この交渉はブリュッセルで行われる見通し。同委員長は10~11日に開かれるEU首脳会議(サミット)で、会談の結果を報告する。
英国のラーブ外相は「何らかの決着を付けるべき時が迫っている」とし、13日以降も交渉が続く可能性は低いとの見方を示している。
英・EU間の事務レベルでの交渉は、平等な競争条件(レベル・プレイング・フィールド)の確保と英海域での漁業権、統治の三つの争点を残したまま終了しており、トップ会談での解決に望みが託されていた。
BBC電子版によると、中でもレベル・プレイング・フィールドについては、労働や環境、気候変動について双方が現行水準以上の規制を維持することにより、平等な競争条件を保つことで事務レベルでの合意がまとまっていた。しかし、EU側はさらに、いずれかが規制をさらに厳格化した場合、他方がこれに追随しなければ関税などで制裁を科せる条項の導入も要求。英国がこれを自国の主権を侵害するものとして、最後まで抵抗したもようだ。
こうした中、欧州委は10日、英国との合意がまとまらなかった場合の混乱回避に向けた緊急措置案を公表した。英国が同様の措置を取ることを前提条件として、航空便や道路輸送を半年間にわたり従来通り提供できるようにするとともに、双方の海域での既存の漁業権を2021年末または漁業権を巡る協定締結まで認める内容。加盟各国はかねて、こうした緊急措置を早急に打ち出すよう求めていたが、欧州委は対英交渉への影響を考慮し、公表を見送っていた。[EU規制]
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。