英国と欧州連合(EU)の将来的な関係を巡る交渉は、足踏み状態が続いている。EUのバルニエ首席交渉官と英国の交渉担当を務めるデービッド・フロスト氏は19~20日に、電話で今後の交渉について協議。バルニエ氏は対面での正式交渉の再開を呼び掛けたものの、フロスト氏はEUのさらなる譲歩が得られるまでこれを拒否するとしている。こうした中、バルニエ氏は21日、欧州議会で「双方が妥協の精神で臨めば、合意に手が届く」との考えを示した。
バルニエ氏は19日のフロスト氏との電話会談で、EU側は今週にロンドンを訪れ、全項目について法的文面に基づく集中協議に着手する準備があるとあらためて伝えた。また、20日の電話会談後には「残された時間を最大限に生かすべきだ」とコメント。「われわれの交渉のドアはまだ開いている」と強調した。
これに対しフロスト氏は20日、協議は「建設的」だったものの、EUの姿勢に「根本的な変化」が見られるまで対面での協議は行わないとコメントしている。
バルニエ氏はこの翌日、欧州議会で対英交渉の現状を報告。その中で「合意の獲得に向け、最後まで双方に必要な妥協を探る」と述べた。また「双方が建設的に妥協の精神で臨み、向こう数日に法的文面に基づく協議に踏み込むとともに、最も困難なテーマの解決に取り組む準備があれば、合意には手が届く」との考えを示した。
英・EU間ではかねて、英国がEUの国家補助ルールに従うレベルと、英領海でのEU加盟各国の漁業権問題が残された争点となっている。バルニエ氏の現状報告によると、ほかにも製品貿易やサービス、エネルギー、社会保障の調整などの分野で相違点が残るものの、これらについては解決の兆しが見え始めている。
その他の分野では協議が進展しており、運輸部門では、陸上輸送を中心に英国が一定のレベル・プレイング・フィールドを受け入れたという。また、英国はEUの研究助成プログラム「ホライズン」や人材育成・交流プログラム「エラスムス計画」に今後も参加する見通し。このほか、欧州人権条約やデータ保護、欧州刑事警察機構(ユーロポール)および欧州司法機構(ユーロジャスト)、犯罪者引き渡しといった警察・司法協力分野や、医療・保健、サイバーセキュリティーでの協力についても協議が進んだとしている。
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