英下院(定数650)は9月29日、国内市場法案を340対256の賛成多数で可決した。同法案は、昨年10月に欧州連合(EU)と締結したEU離脱協定の一部をほごにする権利を政府に与えるもので、国際法に反するとの批判がある。これを受け、政府はこの権利を行使する前に、下院の承認を得る必要があるとする修正案を受け入れていた。ただ、EUはかねてこうした修正では不十分とし、法的措置に出ることも辞さない構えを示している。
国内市場法案は、EU離脱後の移行期間の終了後に国内各地域間で円滑な通商を維持することが本来の目的。ただ、離脱協定で定められた北アイルランドに関する議定書の一部を英政府の一存で無効にできる条項が含まれ、英領北アイルランドと英本土の間での新たな通関検査や、英・EU間で貿易協定がまとまらなかった場合のモノの移動に関するルール、国家補助に関する取り決めを英政府が一方的に拒否できる内容となっている。
同法案を巡っては、北アイルランドの親英強硬派、民主統一党(DUP)を除く野党各党をはじめ、与党・保守党内でもメイ前首相や閣僚経験者を含む議員が、英国の国際的な信用を傷つけるとして反対していた。下院の承認を政府に義務付ける修正が施されたこともあり、今回の採決では与党・保守党からの造反はなかったものの、同党議員20人超が投票を見合わせた。
EUはかねて、同法案の離脱協定に反する部分を9月末までに撤回するよう英政府に要求しており、この期限が守られなければ、法的措置も辞さないとしている。欧州委員会のシェフチョビッチ機関間関係・先見性担当副委員長と英国のゴーブ内閣府担当相は28日にこの問題を協議したものの、議論は平行線をたどっていた。
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