英国と欧州連合(EU)の将来的な関係を巡る交渉の第4ラウンドが5日に終了したが、大きな進展は見られなかった。EUが求める環境・労働基準の統一など公正な競争条件(レベル・プレイング・フィールド)の確保や英領海での漁業権へのアクセスに、英国が引き続き抵抗した。ただ、双方とも交渉を加速させる意欲を示しており、次回第5ラウンドは対面で行う可能性を示唆している。
EUのバルニエ首席交渉官はこの日の記者会見で、今回の交渉では◇レベル・プレイング・フィールド◇漁業権◇警察・司法協力に必要な人権問題◇将来的な関係の統治問題――の4点を主に協議したと説明。このうちレベル・プレイング・フィールドと統治問題についてはまったく進展がなく、漁業権についても英国が区画による割り当てと毎年の更新にこだわり行き詰まったとしている。一方、警察・司法協力については、欧州人権条約の受け入れに向け、やや建設的な協議が行われたとしている。
バルニエ氏は、これらは全てジョンソン英首相が昨年10月にEUと合意した離脱協定の政治宣言に明記されているとした上で、「英国は約束を撤回している」と強く批判。「こうした状態を永遠に続けるわけにはいかない」と訴えた。ただ、英国がこれらの約束を尊重し、「双方が敬意と落ち着きと意欲をもって交渉に臨めば、夏または遅くとも初秋までには着地点が見つかる」と話した。
一方、英国の交渉担当でジョンソン首相の欧州顧問を務めるデービッド・フロスト氏は、協議後に出した声明で「進展は限られたものだったが、協議は建設的なトーンで行われた」とコメント。「交渉は正念場を迎えており、遠隔による形式的な協議では限界に達しつつある」と話した。
今回のラウンドはオンラインで行われたが、次回第5ラウンドについては、バルニエ氏も「未定」としており、対面で行う可能性を示唆している。開始日は6月末または7月上旬との見通しを示している。
ジョンソン首相と欧州委員会のフォンデアライエン委員長は6月中に会談を行う予定で、この会談での打開を期待する声もある。
英国のEU離脱後の移行期間は12月31日に終了する。この日までに貿易協定が締結されない場合、来年以降の英・EU間の貿易には、世界貿易機関(WTO)のルールに基づく関税や輸入量の割り当てが適用されることになる。移行期間の延長は、6月末までに双方が合意すれば可能だが、英政府はEUが延長を望んでも応じない姿勢を示している。[EU規制]
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