英政府は19日、欧州連合(EU)との包括的自由貿易協定(CFTA)の草案を公表した。カナダや日本、韓国などがEUと結んでいる自由貿易協定と類似した内容。英国の交渉担当でジョンソン英首相の欧州顧問を務めるデービッド・フロスト氏は、併せて公開したEUのバルニエ首席交渉官宛ての書簡で、EUが英国にのみ追加条件を課そうとするのは「不可解」と強く批判している。
英政府はこの日、EUとの将来的な関係に向けた各種協定の草案を公表した。CFTA案に加え、漁業、航空、エネルギー、原子力、治安、警察・司法、移民・難民の各分野の協定案を明らかにした。いずれも、15日に終了した対EU交渉の第3ラウンドでEUに提示済みのもので、政府は近く一般公開するとしていた。
フロスト氏はこの書簡で、「EUの他の貿易相手国と比べて、英国だけが近代的な自由貿易協定(FTA)で広く認められている取り決めを享受できない理由は理解しがたい」と批判。また、EUが国家補助ルールや環境・労働基準の統一など公正な競争条件(レベル・プレイング・フィールド)を求めていることについては、「言語道断」などと強い反発を示している。
ゴーブ内閣担当相はこの日、英下院で第3ラウンドの交渉について「建設的」だったと報告。ただ、「原則的に著しい相違があり、互恵的な合意に達するのはなお困難」と話した。特に、EUが求める英領海内での漁業権へのアクセスと、レベル・プレイング・フィールドの2点で開きがあると説明。「EUは英国がもはや加盟国ではないのにEUルールに従うことを求め、英国の漁場へのアクセスを望む一方で、英国のEU市場へのアクセスは制限している」と批判した。ただ、EU側が柔軟さを示せば、締め切りまでに合意に達することは可能との見方を示している。
バルニエ首席交渉官は第3ラウンド後の記者会見で、「英国がレベル・プレイング・フィールドを巡る実質的な協議に応じていない」と批判していた。EU側はかねて、カナダなどと異なり距離的に近い英国とは、公正な競争条件を維持する必要があるとの姿勢を示している。
英国とEUは6月に首脳会議(サミット)を開く予定で、6月1日に開始される交渉の第4ラウンドで溝を埋められるかどうかが焦点となる。英国のEU離脱後の移行期間が終了する12月31日までに貿易協定が締結されない場合、来年以降の英・EU間の貿易には、世界貿易機関(WTO)のルールに基づく関税や輸入量の割り当てが適用されることになる。移行期間の延長は、6月末までに双方が合意すれば可能だが、英政府はEUが延長を望んでも応じない姿勢を示している。[EU規制]
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