英政府は2019年12月31日、25歳以上の労働者を対象とする法定最低賃金の「全国生活賃金」を4月から6.2%引き上げると発表した。伸び幅はインフレ率(1.5%)の4倍超となり、2016年以降で最大。小売業界や保健医療業界を中心に、300万人近くの労働者が恩恵を受ける見込みだ。
25歳以上の労働者の時給は、従来の8.21ポンドから8.72ポンドに上昇する。若年層の最低賃金も併せて引き上げられ、21~24歳は8.2ポンド、18~20歳は6.45ポンド、18歳未満は4.55ポンドとなる。
昨年12月12日に実施された総選挙では、与党・保守党が下院(定数650)で単独過半数となる365議席を獲得し、歴史的な大勝を収めた。その背景には、ブレグジットを巡る先行き不透明感に伴い、最大野党・労働党の支持基盤である労働者階級が保守党に票を投じたことがある。ジョンソン首相はこうした有権者の信頼を得るため、全国生活賃金を大幅に引き上げるに至った。
しかし商工会議所は、経済の先行き不透明感に直面する企業にとって、インフレ率を上回る最低賃金の引き上げを行うには厳しいタイミングだと指摘。キャッシュフローの押し下げ、研修や投資への予算縮小に懸念を示した上で、英政府は他の予算を減らすなどして、最低賃金引き上げのコストを相殺する必要があるとした。[労務]
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