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総選挙、保守党が歴史的大勝 首相「1月末のEU離脱が義務」

12日に投開票された英国の総選挙で、与党・保守党が下院(定数650)で単独過半数となる365議席を獲得した。歴史的な大勝を収めたジョンソン首相は「新たな夜明けだ」と勝利宣言をし、最大の公約である1月末の欧州連合(EU)離脱に向けて「有権者の信頼に応えるため日夜働く」と決意を新たにした。最大野党・労働党は203議席にとどまり、敗北を喫したコービン党首は「次回の選挙で党を率いることはない」と辞意を表明した。BBC電子版などが伝えた。

保守党は2017年の前回選挙から47議席を積み増し、得票率は43.6%で1.2ポイント上昇した。過半数ラインである326議席を大きく上回り、安定した議会運営に十分な議席数を確保した。保守党の議席数と野党の合計議席数の差は80議席となり、1987年にサッチャー元首相が3期目を決めた選挙以降で最大。ジョンソン首相は1月末に英国をEUから離脱させることが義務だと強調し、「『もし』や『だけど』は存在しない」と不退転の覚悟を表明した。

英国では政権の足並みの乱れや野党の抵抗などによりEU離脱が何度も延期され、「ブレグジット疲れ」とも言える空気が広がっていた。ジョンソン首相は「ブレグジットを成し遂げる(Get Brexit done)」というシンプルなスローガンで有権者に支持を訴え、これが結果的に圧勝へとつながった。同首相は選挙後の演説で、新たな政府を「国民の政府(The People’s government)」と表現。「人々は変化を欲している。彼らを失望させることはできないし、失望させてはいけない」と述べた。

労働党の得票率は32.1%と前回から大きく7.9ポイント下落し、59議席を失った。スコットランド民族党(SNP)は13増の48議席へと党勢を伸ばした一方、自由民主党は11議席と1減。自由民主党のスウィンソン党首は、SNPの候補者に149票差で敗れて議席を失い、党首を辞任した。解散前は保守党に閣外協力していた英領北アイルランドの民主統一党(DUP)は2減の8議席だった。選挙人名簿登録者数は4,758万7,254人で、投票率は67.3%と前回から1.5ポイント減った。

投票は午前7時(現地時間)に始まり、午後10時に締め切られた。開票速報が始まって最初に衝撃が走ったのは、イングランド北東部のブライスバレー選挙区で保守党候補者の当選が決まった瞬間。イングランド北東部はかつての炭鉱労働者が多く、労働党の強固な地盤となっている地域で、同選挙区は1950年に新設されて以降、同党が一貫して議席を守ってきたからだ。さらに、その後も周辺地域の6選挙区で保守党が労働党から議席を奪取。とりわけビショップ・オークランド、レッドカー両選挙区は保守党が初めて議席を得た。労働党が議席を維持した選挙区でも、軒並み票差を詰められた。こうした苦戦は、やはり労働党が強いイングランド中部でも同様にみられた。

1935年の選挙以来となる大敗となった労働党は、来年の早い段階で党の体制を刷新する。具体的な日程は、党の全国執行委員会の決定に委ねられているが、マクドネル影の財務相は8~10週間以内に行われるとの見通しを示した。コービン党首は、日曜紙サンデー・ミラーへの寄稿で総選挙での敗北を謝罪し、「本当の変化が必要だった全ての人にとって打撃となった」とコメント。結果に対しての責任を受け入れるとした上で、今でも選挙期間中の戦いには誇りを持っているとした。

労働党の次期党首について、マクドネル氏は自身の立候補の可能性を否定し、女性が望ましいとの見解を示している。候補者として、リサ・ナンディー氏やレベッカ・ロング・ベイリー影の民間企業相、男性ではキア・スターマー影のEU離脱担当相らの名前が挙がっている。

■クリスマス前に法案審議再開

ジョンソン首相は週明けに一部閣僚の入れ替えを行い、公約通りクリスマス休暇前にEU離脱協定法案(WAB)の審議を再開する方針。これは、ジョンソン首相が欧州連合(EU)と合意した離脱協定修正案を国内法化するための法案で、議会を通過する必要がある。1月末のEU離脱を確実なものとするため、審議再開を急ぐ形だ。保守党が単独過半数を握るため、法案の通過はほぼ確実視されている。英国はEUを離脱した後、現状の関係を維持する2020年12月末までの移行期間に入り、その間にEUとの自由貿易協定(FTA)の締結を目指す。

保守党を歴史的大勝に導いたジョンソン首相(首相官邸公式ツイッターより)

保守党を歴史的大勝に導いたジョンソン首相(首相官邸公式ツイッターより)


関連国・地域: 英国
関連業種: 政治

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