ジョンソン首相は24日、12月12日の総選挙に向けた与党・保守党のマニフェストを公表した。欧州連合(EU)離脱協定法案(WAB)の審議をクリスマス休暇前に開始し、「ブレグジットを達成して新たな英国を生み出す」と宣言している。また、向こう5年に国民医療制度(NHS)の看護師数を5万人増やすと公約。世論調査での最大野党・労働党に対するリードを守るため、高所得者向け減税案は盛り込まず、増税は行わないと約束するにとどめており、保守党色の薄い内容となっている。
英下院では10月、WABの審議を継続することで合意がまとまったものの、3日間でのスピード審議を求める政府案が否決されたため膠着(こうちゃく)状態に陥り、総選挙の実施へとつながった経緯がある。保守党のマニフェストでは、ブレグジットの早期実現に向け、選挙後早々にWABの審議を開始すると約束。また、ブレグジット後の移行期間は2020年末で打ち切るとしている。これに向け、対EU貿易交渉を2020年末までに完了する方針だが、これが実現しなければこの時点で合意のないまま離脱することになる。
一方、日本や米国などEU域外との貿易協定は、EU離脱後3年以内に締結するとしている。また、低技能労働者の流入を減らすため、オーストラリア式のポイント型移民制度を導入する。
税金については、所得税やVAT(付加価値税)、国民保険料を引き上げないと約束するにとどめ、党首選で富裕層優遇と批判された最高税率40%の対象所得額の引き上げ案は盛り込まなかった。一方、国民保険料は、支払い義務が発生する最低所得額を2020年から9,500ポンドに引き上げることにより、納税者1人当たり年間100ポンドの負担減とする。
支出面では、有権者に広くアピールするため、凍結などによる道路の損壊の修復工事に年間5億ポンドを振り向けるほか、NHS病院の駐車料金を無料化するとしている。ただ、フィナンシャルタイムズによると、日常的な追加支出は年間30億ポンドにとどまり、労働党の830億ポンド、自由民主党の500億ポンドと比べて大幅に少ない。保守党はこれを、来年4月に予定していた法人税減税の棚上げで賄い、借り入れは公共投資以外の目的では行わない方針。
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