英最大野党・労働党は21日、12月12日の総選挙に向けた党マニフェストを発表した。鉄道、郵便、水道、エネルギーの再国有化や、石油企業に対する超過利潤税の導入などを公約。主に大企業や富裕層に対する増税で年829億ポンドの税収増を狙うほか、公共インフラや国民医療制度(NHS)などへの投資に向け、借り入れを大幅に拡大する内容となっている。
同党のコービン党首はこのマニフェストについて「過去数十年で最も急進的で野心的な計画」と説明。「一部ではなくすべての人のための国へと、英国を一変させるチャンスだ」と強調した。
同党は、キャピタルゲイン税の課税水準を所得税と同等にすることにより年140億ポンドを調達するほか、金融取引税の拡大により年88億ポンド、多国籍企業への課税方式の変更により年58億ポンドをそれぞれ調達する方針。法人税率は19%から26%に引き上げる。このほか、与党・保守党による相続税減税の撤回や、私立学校の授業料へのVAT(付加価値税)課税、セカンドホームへの新税を打ち出している。
石油企業への新税は、石油産業の労働者3万7,000人をクリーン経済への移行に向け再訓練するための原資とする。また、借入金により総額2,500億ポンドの「グリーン転換基金」を設立し、2030年までに炭素排出量の大部分を削減することを目指すとしている。同党は9月の党大会で、同年までの排出量実質ゼロ化を打ち出していたが、労組などの抵抗により、表現を曖昧化した格好だ。
マニフェストでは、通信大手BTグループのオープンリーチ部門などを国有化し、光ブロードバンド・サービスを無料提供することや、時給10ポンドの「実質生活賃金」を導入することも公約とした。
欧州連合(EU)離脱については、離脱協定の再交渉を行い、より緊密なEU関係を盛り込んだうえで、「法的拘束力を持つ」国民投票を行うとしている。
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