与党・保守党のジョンソン首相と最大野党・労働党のコービン党首は19日夜、民放ITVの番組に出演する形で選挙戦で初の直接討論を行い、ブレグジットや国民医療制度(NHS)などを巡り舌戦を繰り広げた。インターネット調査会社ユーガブ(YouGov)が視聴者を対象に行った調査では、僅差でジョンソン首相に軍配が上がった。
議論の半分を占めたブレグジットについて、ジョンソン首相は12月12日の総選挙で過半数議席を獲得することで、先に欧州連合(EU)と合意した離脱協定案をもって来年1月31日までにEUを離脱し、貿易交渉に移る考えをあらためて示した。一方、コービン党首は保守党の離脱協定を撤回し、関税同盟への残留やEU単一市場へのアクセスを維持した新たな離脱協定をEU側と結んだ上、これを巡る国民投票を行う方針だ。
コービン党首はまた、保守党政権がEU離脱後にNHSを米国の医療サービス企業に開放する可能性を指摘。ジョンソン首相はこれに対し「現政権や保守党政権が貿易交渉のテーブルにNHSを置くことは決してない」と否定した。スコットランドの独立問題については、ジョンソン首相は、住民投票実施を条件に労働党とスコットランド民族党(SNP)は連立政権を組むつもりだと主張。コービン党首はその可能性を否定した。
なお保守党に対しては今回、討論中に党の公式ツイッターアカウントを「CCHQプレス」から「ファクトチェックUK」と変え、あたかも第三者による事実確認アカウントのように振舞ったとして批判が上がっている。ツイッターは討論後にこれを摘発。保守党のアカウントは7万6,000人がフォローしており、討論中はジョンソン首相の主張を擁護しながらコービン党首を批判する内容がアップデートされたという。
SNPと自由民主党は先に、今回のテレビ討論参加者に含まれなかったことを不服としてITVを提訴。しかしロンドンの高等法院は、ITVは法律上の公的機能を有していないため、今回のケースは管轄外だとしてこの訴えを退けた。両党の党首はテレビ討論でのジョンソン首相とコービン党首による議論内容に「いずれも首相には不適格」「両者が怒鳴り散らし、話題が転じていた」と批判している。ブレグジット党のファラージュ党首は、コービン党首が勝っていたとしつつも、今後国民投票が再度実施された場合に離脱と残留のどちらに票を投じるかを明確にしなかったと苦言を呈した。
今回のテレビ討論の平均視聴者数は670万人。ユーガブが視聴者1,646人を対象に調査した結果、ジョンソン首相が勝ったとしたのは51%、コービン党首は49%だった。ただ、2017年総選挙時の投票動向と照らし合わせると、保守党支持者は88%がジョンソン首相を、労働党支持者は86%がコービン党首を支持しており、有権者の動向を変えるまでには至っていないようだ。
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