与党・保守党は17日、12月12日に実施される下院(定数650)選挙で勝てば、2021年1月から欧州連合(EU)移民に対する優遇措置を撤廃する方針を示した。就労ビザの交付や福祉手当の給付、国民医療制度(NHS)の利用条件などで、他の国々の出身者と「平等に」扱うとしている。
同党はかねて、下院選挙で勝って1月31日までにEU離脱を実現できれば、移行期間が終了する2021年1月1日付でEUとのヒトの自由な移動を打ち切るとしている。同党は今回、移行期間終了後の移民政策の詳細を公表。それによると、出身国にかかわらず、外国人が英国で就労するためには、来英前に就職先を確保しておく必要がある。ただし、高技能科学者や起業家は例外としている。
また、EU出身者はこれまで、入国3カ月後から福祉手当の給付を受けることができたが、これを他の国からの移民と同じ5年後からとし、英国外に住む子どもへの児童手当の送金を禁止する。これにより、2024年度までに約8億ポンドの支出削減を見込んでいる。NHSの利用については、就労ビザや学生ビザ、家族ビザで滞在中の外国人が支払う国際医療課徴金を、現行の400ポンドから625ポンドに引き上げると同時に、EU出身者にも新たに納付を義務付ける。これにより、NHSは年間5億ポンドを追加調達できる見込み。
保守党は「移民を適切に規制し、EU移民の優遇を廃止することによって初めて、世界から優秀な頭脳を引き付けるとともに、公共サービスの負担を軽減し、低技能の移民労働者への依存から脱して移民総数を削減できる」としている。ただ、ラーブ外相はこの日、英公共放送BBCのテレビ番組で、移民数の削減については「恣意的な目標値は設定しない」と話した。保守党は、2010年以降の3度の選挙戦で移民の純増数を10万人以内に減らすと公約したものの、いまだに達成できていない。一方、経営団体の英産業連盟(CBI)キャロリン・フェアバーン事務局長はスカイニュースに対し、「英国のインフラ刷新や住宅増設には、優秀な頭脳だけでなく、あらゆる技能レベルの移民労働者が必要」と警告している。[労務]
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