12月12日に行われる総選挙に向け、英下院(定数650)が6日未明、解散した。ジョンソン首相は同日午前にエリザベス女王と謁見し、5週間の選挙戦が正式に幕開けとなった。与野党は早くも舌戦を繰り広げており、特に英国の欧州連合(EU)離脱を巡る公約に焦点が当たっている。
ジョンソン首相は首相官邸前で演説し、与党・保守党が総選挙で勝てば議会の停滞状態に終止符を打ち、1月にブレグジットを実現させた上で「英国の可能性を解き放つ」と宣言。最大野党・労働党の勝利はさらなるブレグジットの延期につながる「ホラーショー」を意味するとやゆした。
保守党を巡っては、党の重鎮だったハモンド前財務相が5日、次期総選挙への不出馬を表明。ハモンド氏は先に法律化された合意なき離脱の阻止に向けた法案を支持して造反したことで、9月に除籍処分となっていた。グリーブ元法務長官ら一部議員は、無所属候補として出馬する意向を示している。
一方で、強硬離脱派であるリースモグ院内総務は、2017年に発生したグレンフェルタワー火災を巡りラジオで不適切な発言をしたとして、謝罪する事態に。リースモグ氏を擁護したアンドリュー・ブリッジェン議員も謝罪に追い込まれており、リースモグ氏への批判が高まっている。
なお、選挙戦の開始に伴い、緑の党は気候変動対策に年間1,000億ポンドを投資すると公約。自由民主党はメンタルヘルス関連サービスに22億ポンドを投じ、その資金を所得税率の1%引き上げで賄うと主張した。スコットランド民族党(SNP)は、ブレグジット阻止に向けてEU残留派に投票を呼び掛ける方針だ。最大野党・労働党のコービン党首は5日、政権に就けば半年以内にEUとの離脱協定の再交渉を完了すると公約したものの、ユンケル欧州委員長から早くも「現実的でない」と冷や水を浴びせられた。ただ、最終的な判断は次期欧州委員長のフォンデアライエン氏に委ねられているとした。
ジョンソン首相は当初、エリザベス女王の施政方針演説を通じて政府の新政策を打ち出すためとして、9月10日に議会を閉会。ただし、これに異を唱えるEU残留派議員75人から成る超党派のグループなどが2件の裁判を起こし、最高裁判所は議会閉会措置は違法であり、無効だったとの判決を下した。これにより9月25日に審議を再開。その後数日間の閉会を経て、10月14日に女王の施政方針演説とともに開会したが、3週間ばかりでの解散となり、過去70年超で最短の議会期間が終了した格好だ。
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