12月12日に行われる下院(定数650)選挙に向け、与野党がブレグジット方針を巡り早くも舌戦を繰り広げている。最大野党・労働党のコービン党首は5日、政権に就けば半年以内に欧州連合(EU)との離脱協定の再交渉を完了すると公約したものの、与党・保守党はこれを「夢物語だ」と強く批判。一方、自由民主党のスウィンソン党首は、保守党も労働党もEU離脱を目指す点で同じとし、自分が首相になればブレグジットの撤回により浮いた資金を各種政策に充てると明言した。
コービン党首は、ジョンソン首相がEUと合意した離脱協定案の再交渉を行い、半年以内により優れた合意を取り付けると約束。その上で、2020年夏に2度目の国民投票を実施し、この合意に基づくEU離脱か残留かの二つの選択肢を国民に示す方針を示した。スケジュール的にこれは「実行可能」としている。国民投票でどちらを支持するかは、明らかにしていない。
これに対し保守党は、「労働党案は1からのやり直しで、不透明感を増し英国を機能不全に陥れる」と批判する。同党はかねて、ジョンソン首相の離脱協定案に基づきブレグジットを実現させ、2020年12月末までの移行期間中にEUとの将来的な貿易協定も締結するとしている。これに対しては、移行期間終了後に合意のないままEUを離脱する危険性があると指摘されているが、内閣で合意なき離脱の準備を担うゴーブ氏はこの日、「保守党が過半数議席で政権に就けば、移行期間の延長は絶対に行わない」と明言。移行期間中の貿易協定締結に自信を示した。
新党「ブレグジット党」のファラージ党首は先に、保守党にEU離脱派の票割れを回避するための連携を呼び掛けたが、ジョンソン首相はこれを拒否している。ファラージ氏はこの日、労働党からEU離脱派の有権者を奪うと宣言した。
一方、自由民主党のスウィンソン党首はこの日の決起集会で、ブレグジットを取りやめれば向こう5年で500億ポンドのコストが浮くとし、この「残留ボーナス」を公共サービスや格差解消に振り向ける方針を示した。「今回の総選挙は、新しい政府が出現する大変革の瞬間」と強調している。ただ、現在わずか20議席の同党にとっては、公約実現よりむしろ、残留派の支持により二大政党の票にどこまで食い込めるかが焦点とみられている。
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