英下院(定数650)で29日、12月12日に早期総選挙を実施する法案が可決されたことを受け、各党は30日、選挙戦の準備に乗り出した。ジョンソン首相率いる与党・保守党は下院で単独過半数を獲得し、欧州連合(EU)離脱を実現することを目指すが、公約だった10月31日の離脱実現を果たせないままでの選挙戦となる。一方、同首相の独走阻止を目指す野党各党も足並みはそろわず、最大野党・労働党は党内にも亀裂を抱える。こうした中、総選挙は与野党双方にとって大きな賭けとなりそうだ。
ジョンソン首相が12月12日の総選挙実施を求めて提出した法案は、賛成438票、反対20票の大差で可決された。これまで合意なき離脱の阻止を優先するとして早期総選挙に反対してきた最大野党・労働党が、EUによる離脱延期の承認を受け賛成に回ったことが大きい。ただ労働党内には、総選挙よりも国民投票を優先すべきとの意見も根強く、100人以上の労働党議員が投票を棄権し、11人は反対票を投じた。コービン党首と共に賛成票を投じたのは127人だった。
同法案は現在、上院で審議されており、順当に進めばここでも可決される見通し。そうなれば、下院は11月6日で解散され、5週間の選挙期間が始まる。クリスマス前の繁忙期で天候も厳しい12月の総選挙は、1923年以降で初めてとなる。
ジョンソン首相は30日に下院で、「国民が団結しブレグジットを完遂するべき時がきた」と強調。労働党が選挙で勝てばブレグジットが遅れ、2度目の国民投票やスコットランドの独立をめぐる住民投票が行われることになると訴えた。
これに対し、労働党のコービン党首は「今回の選挙は国民の足かせとなっている既得権益を剥奪し、英国を一変させる1世代に1度のチャンス」と意欲を示し、ブレグジットにとどまらず幅広い観点から選挙戦に臨む姿勢を示した。ブレグジットについては、同党はかねて選挙で勝てば、EUと離脱協定の再交渉を行った上で、2度目の国民投票を実施し、EU残留も選択肢に含める方針を示している。
一方、自由民主党のスウィンソン党首は、ブレグジット阻止を前面に押し出し、過半数を獲得すればEU離脱を撤回することを公約に掲げる。ジョンソン首相が再選されてもコービン党首が首相になっても、連立政権には参加しないとしている。
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