ジョンソン首相は21日、先に欧州連合(EU)と合意した離脱協定修正案の採決を英下院(定数650)に再び求めたものの、バーカウ下院議長はこれを拒否した。同じ内容の政府案の採決を繰り返し行うことはできないとの根拠に基づき判断を下した。これを受け、同首相はまず、同協定を国内法化するための離脱協定法案(WAB)の成立を目指すことになるが、これには修正動議が提出されることが見込まれ、10月31日の離脱期限までに決着がつく可能性は薄れている。
下院は19日、離脱協定の修正案の採決を先送りした。合意なき離脱の回避を目指す超党派議員団が「離脱関連の国内法が成立するまで離脱案の承認を保留する」との修正動議を提出し、これが本採決の前に可決されたため。これを受け、ジョンソン首相はやむなくEUに離脱延期を要請する書簡を送付。21日に再度、同案の採決を求める動議を提出したものの、バーカウ議長は「繰り返しになり、秩序を乱す」としてこれを拒否した。
首相広報官はこれを受け「下院議長が国民の意思を実現する機会を否定したことに失望している」との声明を発表。「国民はブレグジットの完遂を求めている」とコメントした。
同首相は間もなく下院にWABを提出する見通し。ただ、WABに対してはさまざまな修正動議の提出が予想されている。最大野党・労働党は既に、英国全体がEU関税同盟にとどまる案や、2度目の国民投票の実施を求める案を修正動議として提出する考えを示している。こうした修正動議の審議には時間がかかる上、修正動議によりWABが同首相とEUの合意内容からかけ離れた内容となれば、首相はEUとの再交渉を余儀なくされる。このため、ジョンソン首相が10月31日に離脱を実現できる見込みは薄くなっており、同首相がEUとの再交渉を避けるため、総選挙の実施を改めて求める可能性も高まる。
一方、ジョンソン首相がEUに離脱の延期を要請する書簡を送付したことを受け、欧州委員会の広報官は「トゥスク大統領はこの書簡を受領し、EU加盟27カ国との協議に着手した」との声明を出した。ただ、「次のステップを説明する義務は英国にある」と指摘し、英国内の動向を見守る姿勢を示している。
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。