欧州連合(EU)は17日開いた首脳会議(サミット)で、英国の離脱条件を定めた「離脱協定」と英・EU間の将来的関係に関する「政治宣言」の修正案を承認した。今後、欧州議会と英議会がこれらを批准すれば、英国は10月31日に合意に基づいてEUを離脱することになる。ただ、英与党・保守党に閣外協力する英領北アイルランドの民主統一党(DUP)はこの内容に反対しており、英下院での承認は難航が予想される。
英・EUの交渉団はここ数日、昼夜を徹して協議を続け、この日朝にようやく法的文面で合意していた。サミットで承認されたのは、2018年11月にメイ前首相がEUと合意した離脱協定と政治宣言を修正したもの。新たな離脱協定案では、北アイルランドとアイルランドの間の国境検査を避けるための「バックストップ(安全策)」が取り除かれ、新たな措置が盛り込まれた。それによると、北アイルランドはEU単一市場にとどまる一方、EU関税同盟は脱し、英国の関税領域に組み込まれる。北アイルランド議会は、4年ごとにこの措置の継続の是非を単純多数決で決める。
ジョンソン英首相はサミット後の記者会見で、これを「素晴らしい合意」と呼び、英下院に支持を呼び掛けた。「今こそブレグジットをやり遂げ、将来のパートナーシップの構築に取り組むべき時だ」と訴えた。
同首相は19日に下院を臨時招集し、これらの修正案の採決を行う方針。ただ、DUPはこの日、「これらの措置は北アイルランドの長期的な利益と一致しない」として、支持しない方針を示した。また、最大野党・労働党のコービン党首も「メイ前首相の離脱協定より条件が悪い」として、否決を呼び掛けている。
ジョンソン首相は、先に成立した「ベン法」により、10月19日までに英議会がEUとの合意を承認しなければ、来年1月31日までの離脱延期をEUに要請するよう義務付けられている。しかし、同首相はかねて「何が何でも」10月31日の離脱期限を守るとしており、この日も「ブレグジットをこれ以上遅らせるべきではない」との考えをあらためて示した。
離脱の延期は、他のEU加盟27カ国が全会一致で承認した場合にのみ認められる。欧州委員会のユンケル委員長は、サミット会場でのインタビューで「良い合意がまとまったのだから延期の必要はない」として、離脱延期は推奨しない方針を示唆している。
■英議会通過の可能性は
英議会で離脱協定の承認を得るためには、賛成320票が必要となる。保守党が持つ票数は287票で、ジョンソン首相は前提条件として1人の造反者も出さないことが重要となる。
保守党を離党して現在は無所属となっている議員が23人おり、全員ではないが大半は離脱協定を支持するとみられている。しかし、これでも可決には不十分で、労働党議員や労働党を離党した無所属議員の取り込みが必要だ。3月にメイ前首相の離脱協定案に対して投票が行われた際は、労働党議員5人と元労働党の無所属議員2人が賛成に回っており、今回はこれよりも支持が増えるとみられている。
しかし、こうしたシナリオが全てジョンソン首相に有利なように運んだとしても、投票結果は極めて僅差になると予想される。
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