ジョンソン英首相は10日、アイルランドのバラッカー首相と会談し、英政府が先に欧州連合(EU)に提出した離脱案について協議した。両首相は会談後に「合意への道筋を見いだせるとの見解で一致した」との共同声明を出した。英国とEUの合意の鍵を握るバラッカー首相は、英政府の離脱案に前日まで難色を示していたが、直接会談で潮目が変わったようだ。
会談は、イングランド北西部リバプール近郊にあるソーントンマナーで開かれた。両首相は2時間にわたって話し合いを続け、2人だけで外を歩きながら一対一で討議する場面もあった。
共同声明では「詳細で建設的な協議を行った。双方は引き続き合意成立が全ての人の利益に適うと確信している」とコメント。さらにバラッカー首相は、会談が「前向きなものだった」と評価し、「ブリュッセルでの交渉を再開するのに十分値する」と好感触を示した。
今回の会談結果を受け、交渉関係者は引き続きそれぞれの作業に集中的に取り組む。バラッカー首相は自国のブレグジット対策本部との協議に戻るほか、英国のバークレイEU離脱担当相とEUのバルニエ主席交渉官は11日に協議の場を持つ予定だ。
英政府がEUに提案した離脱後のアイルランド国境問題の解決策は、離脱協定に含まれる「バックストップ(安全策)」に代わり、英領北アイルランドが移行期間終了後の2021年から製品貿易でEU単一市場にとどまる一方、英本土と共にEU関税同盟を離脱する内容。ただし、通関検査は国境ではなく、サプライチェーンのいずれかの時点で実施するとしている。
これに対してバラッカー首相は、当初から北アイルランドがアイルランドと異なる関税領域に属する点に難色を示していた。ただ、同首相は会談前にアイルランド議会に対し、政府は合意を望んでおり離脱期限ぎりぎりまで努力するとの方針を明らかにしていた。10月17~18日に開かれるEU首脳会議(サミット)は、アイルランドの意向に沿って話し合いが進められるとみられ、今回の会談の結果は大きな影響を与える。
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