ジョンソン英首相とメルケル独首相は8日、電話会談を行い、英政府が先に欧州連合(EU)に提出した離脱案について協議した。協議内容は明らかにされていない。ただ、英首相官邸筋はこの会談を受け、「合意成立は基本的に不可能」との見解を示している。BBC電子版が伝えた。
英首相官邸筋は、メルケル首相が「英国は英領北アイルランドをEUの関税同盟に恒久的に残さない限り、EUを離脱することはできない」との考えを示し、ジョンソン首相の提案に基づく合意成立の可能性は「ほとんどない」と述べたと主張している。
これに対し、メルケル首相の広報官は「対英交渉は欧州委員会が主導するものであり、ドイツの首相が北アイルランドの関税同盟残留を主張することなどあり得ない」と反論。「ドイツ政府はジョンソン首相の提案に懐疑的とはいえ、メルケル首相は常に前向きに妥協の余地を見出そうとしてきた」と強調し、ジョンソン首相が合意なき離脱の責任をドイツに被せようとしている可能性を示唆した。
EUのトゥスク大統領はツイッターでジョンソン首相に対し、「重要なのは馬鹿げた責任のなすりつけ合いに勝つことではなく、将来的な英・EU関係と双方の市民の安全保障および利益だ」と指摘。また、アイルランドのコブニー副首相兼外相も、トゥスク氏の言葉は「EU全体のいら立ちを反映している」と賛同した上で、「われわれは公正なブレグジット合意の成立に前向きだが、そのためには英政府の協力が必要」としている。
ジョンソン首相がEUに提出した案は、EU離脱協定に含まれる「バックストップ(安全策)」に代わるもの。北アイルランドは移行期間終了後の2021年から、製品貿易でEU単一市場にとどまる一方、英本土と共にEU関税同盟を離脱する内容で、EU側はこれを問題視している。また、この案の実施には北アイルランドの自治政府および議会の承認が必要としており、EU側は北アイルランド議会の第1党である民主統一党(DUP)が事実上の拒否権を持つ点や、この案が否決された場合の対策が示されていない点に難色を示している。
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