ジョンソン英首相は3日、英議会での演説で、2日にEUに提案したEU離脱後のアイルランド国境問題の解決策について説明した。議会は合意なき離脱に反対するなら、この案を支持するべきと訴えたが、最大野党・労働党のコービン党首はこの案は「受け入れられない」としている。一方、欧州連合(EU)側の鍵となるアイルランドのバラッカー首相も、この案には不十分な点があるとの見方を示している。
この案は、離脱協定に含まれる「バックストップ(安全策)」に代わるもので、英領北アイルランドは移行期間終了後の2021年から、製品貿易でEU単一市場にとどまる一方、英本土と共にEU関税同盟を離脱する内容。ただし、通関検査は国境ではなく、サプライチェーンのいずれかの時点で実施するとしている。
同首相は英議会で、「この案は、自由貿易協定に基づくEUとの将来的な関係構築や、貿易政策と規制の支配権奪回を可能にするもの」と強調。議会に支持を求めた上で、10月31日には合意の有無にかかわらずEUを離脱する方針をあらためて示した。
これに対し、コービン党首は「この案は英国全体と北アイルランドの経済を傷つける」と反論。「非現実的で破壊的なこの案は、EUにも下院にも国民全体にも拒否されるだろう」と話した。一方、これまでEU離脱協定に反対してきた北アイルランドの民主統一党(DUP)や与党・保守党の離脱強硬派議員の一部は、この案を支持する姿勢を示している。
バラッカー首相はこの日の記者会見で、「この案にはいくつかの面で足りないものがある」と指摘。特に、北アイルランドがアイルランドと異なる関税領域に属する点に難色を示した。EUのトゥスク大統領は「EUはアイルランドを全面的に支持する」とした上で、英国の提案については「なおオープンに臨むが、納得はしていない」と話している。
EU離脱協定の成立には、英議会に加え欧州議会での承認も必要となる。欧州議会のブレグジット運営委員会は「英国の提案は、バックストップで合意した内容とかけ離れている」とコメント。特に、通関検査をどこでどのように行うのかが不明な点などに懸念を示し、「このままでは欧州議会が承認できる合意の土台にならない」との見方を示した。
■英議会は短期間閉会に
ジョンソン首相は2日、10月8日夕に議会を閉会する方針を明らかにした。10月14日に再開し、女王の施政方針演説を通じて政府の新政策を打ち出す狙い。
同首相は9月10日から5週間にわたり議会を閉会したが、英最高裁判所は先に、こうした長期的な閉会措置は議会が憲法上の役割を果たすことを妨げるとして違法判決を下し、閉会を無効とした経緯がある。ただ、施政方針演説が行われなければ、政府は新政策を提案できないため、今回は通常通り数日間にわたり議会を閉会する。
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