英最高裁判所は24日、ジョンソン首相による議会閉会措置は違法であり、無効だったとの判決を下した。議会は閉会されなかったことになり、上下院共に直ちに議員を迎えることができるとしている。ロンドンの高等法院は先に、議会閉会は政治判断であり裁判所の管轄外として訴えを棄却していたが、最高裁はこれを覆し、この問題は裁判所の管轄内とみなした。判決は、最高裁の判事11人が全会一致で下した。同首相にとっては最悪の判決となり、今後の対応が注目される。
ジョンソン首相は、9月10日に議会を閉会。その目的については、女王の施政方針演説を通じて政府の新政策を打ち出すためと説明していた。しかし、最高裁のヘイル裁判長は判決文で「これは通常の女王の施政方針演説に向けた閉会ではなく、夏季休暇終了から10月31日の欧州連合(EU)離脱予定日までの8週間のうち5週間にわたり、議会が憲法上の役割を果たすことを正当な理由なく妨げるものだった」と指摘し、これを違法とする判断を下した。この結果、議会閉会は無効となり、「議会は閉会されていないことになる」として、上下院の議長に直ちに審議の再開に向けた措置をとるよう促した。
今回の判決は、首相による議会閉会の権限に制限を加えるとともに、政府がこれを逸脱した場合には司法権限で介入できることを示した。また「政府は下院の信任によって成り立つ。これを置いて他に民主的な正当性はない」として、政府の議会に対する上位性を否定するなど、成文憲法を持たない英国にとって歴史的な判例となる。
最高裁は、スコットランドの民事控訴院とロンドンの高等法院で先に行われた同様の訴訟の上訴を受け、17日に審問を開始していた。スコットランドの訴訟はEU残留派議員75人から成る超党派のグループが起こし、民事控訴院の判事3人は満場一致で違法と判断。ロンドンでは実業家のジーナ・ミラー氏が英政府を提訴し、高等法院は裁判所の管轄外としてこれを棄却したが、上訴を認めていた。
最高裁の判決を受け、バーカウ下院議長は25日午前11時半(現地時間)に議会を再開すると明らかにした。
ジョンソン首相は今回の判決について、強く異議を唱えるとしながらも「尊重する」とコメント。議会と裁判所が対EU交渉を困難にしているとした上で、10月31日にEUを離脱する決意を改めて示した。一方、最大野党・労働党のコービン党首は「首相は自らの去就を検討するべき」とコメント。スコットランド民族党(SNP)と自由民主党は同首相の辞任を要求している。ただ、野党各党はかねて合意なきEU離脱の回避を見届けるまで総選挙は実施しない方針を示しており、議会再開後の各党の動きはなお不透明だ。
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