英最高裁判所で19日、ジョンソン英首相による議会閉会措置の妥当性を巡る訴訟の審問が終了した。政府側の弁護士は、首相の政治的判断は裁判所が介入する事案ではないと主張する一方、反対派の弁護士は英国の欧州連合(EU)離脱を前に議員の議論の機会を奪う行為だったとして糾弾。判決は23日以降に下される見通し。BBC電子版などが伝えた。
最高裁は今回、スコットランドの民事控訴院とロンドンの高等法院で先に行われた同様の訴訟の上訴を受け、17日に審問を開始した。スコットランドの訴訟はEU残留派議員75人から成る超党派のグループが起こし、民事控訴院の判事3人は満場一致で違法と判断。ロンドンでは実業家のジーナ・ミラー氏が英政府を提訴したが、高等法院は裁判所の管轄外としてこれを棄却した半面、上訴を認めていた。
最高裁の判事11人は、初日は敗訴側の、2日目は勝訴側の主張をそれぞれ重点的に聞いた。政府の弁護士は議会閉会について「確立された、憲法に基づいた機能を政府が行使した」とし、それを巡る決断は政治的なものだと強調した。議会の政府に対する監視機能が制限されることについては、閉会が終われば権利を行使できると反論した。
一方、ジョンソン首相に反意を示した超党派グループの弁護士は、ジョンソン氏の行為について「悪い信念と不適切な目的」で行われたと指摘。議会閉会を巡る新たなルール策定をする意図はないが、今回の動きが憲法上の原則に則っていたかを判断するのは裁判所の管轄だと主張した。
また、合意なしでのEU離脱に反対するメージャー元首相の弁護士は、ジョンソン首相がエリザベス女王に対し新たな立法議案に着手するために閉会が必要だと伝えたことについて、この理由は「真実ではない」と指摘。ジョンソン氏の行為は、EU離脱交渉で要となる10月17~18日のEU首脳会議(サミット)前に、合意なきEU離脱に反対する議員を黙らせるための政治的な行為だったと糾弾した。加えて、スコットランド自治政府を代表する弁護士は、5週間の閉会期間について、正当性を主張する通達はなかったと補足している。
最高裁が違法と判断した場合、野党側は閉会を直ちに中止するよう求めている一方、政府は議会をあらためて閉会する考えを示しているという。
英議会は10日に今会期を終了。10月14日に新会期が始まるまで、ブレグジット問題を含めて一切の審議が停止される。合意の有無にかかわらず10月31日にEUを離脱することを目指すジョンソン首相が先に決めた措置だが、野党各党が提出した合意なきEU離脱の阻止に向けた法案は女王の勅許を得て閉会前に法律として成立。これにより、ジョンソン氏は10月19日までにEUから合意を取り付け、議会の承認を得られなければ、離脱期限を来年1月31日まで延期するようEUに要請することを義務付けられた。
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