英議会は10日、今会期を終了した。10月14日に新会期が始まるまで、ブレグジット問題を含めて一切の審議が停止される。合意の有無にかかわらず10月31日にEUを離脱することを目指すジョンソン首相が先に決めた措置。合意なき離脱に反対する議会の横やりを避ける狙いとみられており、野党はこれに最後まで猛反発していた。
下院ではこの日、午前2時前にようやく全審議が終了。閉会の儀式が始まると、同首相には「恥を知れ」との野次が浴びせられ、野党の一部議員が無言で「口を封じられた(Silenced)」と書いた紙を掲げたり、バーカウ下院議長の退場を阻もうとするなど、場内は異例の雰囲気に包まれた。
下院はこれに先立ち、ジョンソン首相が提出した10月15日に早期総選挙を実施する案を否決。このため、総選挙が実施されるのは早くても11月以降の見通しとなった。また、この日には合意なきEU離脱の阻止に向けた法案が女王の勅許を得て法律として成立。これにより、ジョンソン氏は10月19日までにEUから合意を取り付け、議会の承認を得られなければ、離脱期限を現行の10月31日から来年1月31日まで延期するようEUに要請することを義務付けられた。
ジョンソン首相はかねて、EUから合意を取り付けるためには、合意なき離脱の選択肢を交渉の切り札として残す必要があると訴えていた。同首相は閉会前の最後の演説で「議会がどんなに多くの策略で私の手を縛ろうとも、国益のために合意を取り付ける努力をする」と強調。10月17日のEU首脳会議(サミット)での合意成立を目指すとした上で、「この政府には、ブレグジットをこれ以上延期するつもりはない」とあらためて強調した。
同首相はかねて、メイ首相がEUと合意した離脱協定からアイルランド国境を巡る「バックストップ(安全策)」を完全に撤廃するようEUに求めている。ただ、9日にアイルランドのバラッカー首相と会談した際には、離脱後に農産物と食料についてのみ英領北アイルランドをEU関税同盟に含める妥協案や、バックストップの期限を設定する案を示唆。合意の獲得に向け、バックストップの「撤廃」から「修正」へと姿勢を軟化させつつあるとの見方もある。
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。