ジョンソン英首相は9日、アイルランドの首都ダブリンで同国のバラッカー首相と会談した。英国の欧州連合(EU)離脱で争点となっているバックストップ(安全策)問題について協議したものの、両者間にはなお大きな隔たりが残った。一方、英議会を先に通過した合意なき離脱を阻止する法案は、この日に正式に成立。ジョンソン首相はこれに対抗し、下院で10月15日に総選挙を実施する案の採決を行ったものの、野党各党の反対により否決された。10日未明(現地時間)の議事終了をもって、議会は今会期を終了した。
バラッカー首相は会談前の記者会見で、「バックストップは依然として離脱協定に欠かせない要素だ」と強調。「代替案があれば検討するが、それは現実的で法的拘束力があり、実行可能なものでなければならない」と指摘し、「そのような代替案はまだ受け取っていない」と話した。これに対しジョンソン首相は「合意なき離脱は政治的失敗であり、その責任は我々がすべて負うことになる」と訴えた。会談後の共同声明では、「議論は初期段階にあり、一部の分野では共通点が確認されたものの、なお大きな隔たりが残る」としている。
合意なきEU離脱の阻止に向けた法案は、この日に女王の勅許を得て法律として成立した。これによりジョンソン首相は、10月19日までにEUと合意を取り付け、英議会がこれを承認するか、合意のないまま離脱することを英議会が承認しなければ、離脱期限を現行の10月31日から来年1月31日まで延期するようEUに要請することを義務付けられる。同首相はかねて、離脱を延期するなら「死んだほうがまし」としており、この法律に従うかどうかが注目されている。
同首相は離脱延期を回避する一手として、10月15日の総選挙実施を狙っていたが、英最大野党・労働党やスコットランド民族党(SNP)、自由民主党、ウェールズ党などは、同首相がEUから離脱延期を確保するまで早期総選挙の実施には応じない方針。下院ではこの日、早期総選挙を求める動議と審議が開始。与野党の白熱した議論は10日も続いたが、採決では実施に必要な票数を確保できず、再び否決された。
議会は今後、10月14日まで休会となり、一切の審議が停止される。ジョンソン首相が先に、合意なき離脱の阻止に向けた法案の可決を避けるため、9月半ばに議会を閉会することを決めていたため。結局、その目的は果たせず、10月中の解散総選挙の道も閉ざされたジョンソン氏は、休会中に態勢の立て直しを迫られる格好となる。
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