英上院で5日、英国の合意なき欧州連合(EU)離脱の阻止に向けた法案の審議が始まった。同法案は既に下院を通過しており、6日には上院も通過する見込みとなっている。これに対し、ジョンソン首相は10月15日に総選挙を行うことを求めており、9日に下院でこの案を巡る採決を再度行う方針だ。BBC電子版が伝えた。
上院で審議されている法案は、10月19日までにEUと合意を取り付け、英議会がこれを承認するか、合意のないまま離脱することを承認しなければ、来年1月31日までの離脱延期をEUに要請するよう首相に義務付けるもの。下院では4日に第1読会から第3読会までをスピード通過した。上院では少数派の与党・保守党議員が牛歩戦術で通過を阻止するとの予想もあったが、同党の上院院内総務が6日午後5時までの上院通過を約束したことを受け、9日にも女王の勅許を得て法律として成立すると見込まれている。
これに対し、あくまで10月31日のEU離脱を目指すジョンソン首相は先に、下院に早期の総選挙を求める動議を提出。4日夜にはこちらの採決も行われたが、可決に必要な3分の2の支持が得られず否決された。これを受け、同首相は5日、9日に下院で10月15日の総選挙実施に向けた法案の採決を再び行う方針を明らかにした。
同首相は、合意なき離脱阻止の法案を支持した21人の造反議員に事実上の除籍処分を科したため、下院では与党の議席数が過半数を大きく割り込んでいる。ジョンソン首相は、早期の総選挙でEU離脱派の支持を獲得して議席数を回復し、10月31日に合意の有無にかかわらずEUを離脱することを狙う。
一方、最大野党・労働党はかねて総選挙に意欲を示していたが、合意なき離脱が確実に回避されるまでは実施に応じない方針で、同党議員の大半が早期総選挙を巡る4日の投票を棄権した。党内では、ジョンソン首相がEUに離脱延期を要請し、合意なき離脱が確実に回避されるまで、総選挙の実施に賛成するべきではないとの意見が強まっている。
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