ジョンソン首相は、野党が提出予定の合意なき欧州連合(EU)離脱を阻止する法案に賛成票を投じる与党・保守党議員に厳しい処分を科す方針のようだ。造反議員は次回選挙で保守党からの立候補を禁止され、事実上の除籍処分となる見通し。合意なき離脱にはハモンド前財務相ら党重鎮の一部が反対しているだけに、3日の議会再開を控え党内の亀裂が一段と深まる可能性がある。保守党の下院院内幹事らの話を元に、BBC電子版が伝えた。
最大野党・労働党をはじめとする野党各党は現在、合意なき離脱を阻止する法案の作成に取り組んでおり、議会再開後、直ちに採決に持ち込む方針。保守党でもハモンド氏やゴーク前法相、グリーブ元法務長官ら15人の下院議員が公にこの動きを支持しており、多ければ約20人の造反者が出る可能性がある。保守党の下院での議席数は過半数をわずか1議席上回るのみのため、これらの造反議員が除籍になれば、ジョンソン氏は少数政権を率いることになる。
ジョンソン首相は2日、首相官邸前で緊急記者会見を開き、保守党議員に同首相のブレグジット方針を支持するよう改めて呼び掛けたとともに、労働党のコービン党首によるブレグジットの実現を「無意味に」再度遅らせる行為には反対票を投じなければならないと訴えた。また、同法案が可決された場合、ジョンソン首相が解散総選挙に打って出るとの臆測が広がっていたが、これについては「総選挙をするつもりはない」と明確に否定した。
ジョンソン首相は先に、9月9日の週から10月14日まで議会を閉会する異例の措置を断行。これも、合意なき離脱を阻止する法案の審議を封じ込める狙いとみられている。この措置には国民からも反発の声が上がっており、8月31日には国内30カ所以上で抗議デモが行われた。ロンドン中心部では約2,000人が集まり、一時、交通がまひしたほか、イングランド北部のマンチェスターやリーズ、ヨーク、英領北アイルランドのベルファストなどでもデモ行進が行われ、計数千人が参加した。
■EU主席交渉官、バックストップ廃止を拒否
EUのバルニエ首席交渉官は8月31日付テレグラフへの寄稿で、ジョンソン首相が求めるバックストップ(安全策)の廃止には応じられないとの姿勢を改めて示した。「EU単一市場の保全性を確保すると同時に、アイルランドと英領北アイルランドの間の国境をオープンに保つ上で、バックストップはEUが非加盟国に提供できる最も柔軟な措置」としている。
ジョンソン首相はかねて、メイ前首相がEUと合意した離脱協定に含まれるバックストップ条項を取り除くよう求めており、EUがこれに応じなければ合意の有無にかかわらず離脱期限の10月31日にEUを離脱する決意を示している。バルニエ氏は今回、「英国が合意なしに離脱したとしても、10月31日以降に同じ問題を解決する必要がある」と指摘し、同首相のこうした姿勢について「理解しがたい」としている。
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