ジョンソン首相が9月半ばに議会の閉会を宣言するようエリザベス女王に要請し、女王がこれを承認したことを受け、国内に波紋が広がっている。欧州連合(EU)離脱期限を目前に議会での議論を封じ込めるこの措置には、野党に加え、合意なき離脱に反対する与党・保守党の議員らも猛反発しており、29日には同党の上院院内総務がこれに抗議して辞任。国民の間でも批判の声が強く、議会閉会に反対するオンライン署名には、この日午後の時点で既に140万筆以上の署名が集まっている。
議会は現在、夏季休暇中で、9月3日に審議が再開される予定となっている。同首相は再開から2週目の9月9日からの週に今会期の終了を宣言し、各党の党大会が終了した後の10月14日に新たな会期を開始するよう女王に要請。慣例に従い、女王がこれを承認した。
議会は通常、毎年春に1年間の会期を終えるが、メイ前首相はブレグジットのめどを付けるため会期を延長し続けたため、今会期は2017年6月から続いている。保守党のリースモグ下院院内総務は閉会措置について、「今の会期は過去400年近くで最長に達しており、議会を停止して新会期を始めることは正しいことだ」と説明している。
これに対し、同党のジョージ・ヤング上院院内総務は「このタイミングでの長期的な議会停止は、議会の基本的役割を損なう恐れがある」と抗議し、辞表を提出した。
28日夜にはこの措置に抗議する国民が国会議事堂前に集結し、首相官邸までデモ行進を行った。インターネット調査会社ユーガブ(YouGov)による緊急世論調査によると、国民の47%はこの措置を「容認できない」としており、「容認できる」の27%を大きく上回っている。ただ、保守党支持者やEU離脱派の間では、この措置を容認する人がわずかに半数を上回っている。
一方、2016年にEU脱退通告を行うには議会の承認が必要として政府を訴え、勝訴した実績のあるEU残留派の活動家ジーナ・ミラー氏は、今回の議会閉会措置を巡る司法判断を裁判所に申請した。
最大野党・労働党と野党各党の首脳は先に、合意なき離脱の阻止に向けた法案の成立に一致協力して取り組むことで合意していた。しかし、閉会中は一切の審議が停止される上、その時点で通過していない法案は原則として廃案となる。憲法の専門家によると、今回の閉会期間は通常より大幅に長く、ブレグジットを巡る下院での審議日数が半減する可能性もある。
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