ジョンソン首相は21~22日にメルケル独首相およびマクロン仏大統領と相次いで会談し、英国の合意なき欧州連合(EU)離脱を避けるため、離脱協定に含まれる「バックストップ(安全策)」を撤回するよう求めた。これに対し、メルケル首相はバックストップに代わる現実的な解決策を提示するよう要求。「30日以内でそれを見出すことも可能」との考えを示した。一方、マクロン大統領も、バックストップは必要不可欠との考えを示した上で、英国からの代替策提示を待つ姿勢を示した。
メルケル首相は21日の会談後の記者会見で、バックストップは「英・EU間の将来関係が定まるまでの保険的な措置であり、その代替策を示すには将来的な英・EU関係を完全に明確にすることが必要」と指摘。その上で、「2年かけて見出そうとした解決策を、30日以内に見出すことは可能」と話した。これに対しジョンソン首相は、「解決策を示す責任は英国にある」と認めるとともに、「30日以内という厳しいスケジュールを課されたが、これを喜んで受け入れる」と話した。ただ、メルケル首相はその後の記者会見で、「30日というのは残された期間が短いことを示す言葉のあやで、具体的な期限ではない」と説明している。
一方、マクロン大統領は22日の会談後の記者会見で、バックストップは政治的安定と単一市場を守るために「必要不可欠」とする一方、双方が善意で取り組めば30日以内に解決策を見出せるという「強い確信がある」と話した。「この期間で既存のものとと大きく異なる新たな離脱協定を見出すことはできないだろう」とくぎを刺した上で、既存の協定の内容を変えなくても解決は可能との見方を示した。
これに対しジョンソン首相は、アイルランドと英領北アイルランドの間で国境検査や国境管理を行うことは「絶対にない」と約束。あくまでEUとの合意を目指すとした上で、10月31日にEUを離脱することは「政治への信頼にとって重要」と強調した。
メイ前政権がEUと合意した離脱協定に含まれるバックストップは、移行期間内に英国とEUが貿易協定で合意できない場合に発動する措置で、アイルランドと英領北アイルランドの間の国境検査を避けるため、英国全体が関税同盟にとどまり、英領北アイルランドに単一市場ルールの大部分を適用する内容。英下院ではこれが支障となり、英脱協定が3度にわたり否決された経緯がある。ジョンソン首相は先に、EUのトゥスク大統領に対し、バックストップの離脱協定からの排除を求めたが、同大統領は「具体的な代替策が示されていない」としてこの要求を拒否していた。[EU規制]
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