ジョンソン英首相は19日、欧州連合(EU)のトゥスク大統領に宛てた書簡で、メイ首相がEUと合意した離脱協定から、アイルランド国境を巡るバックストップ(安全策)を取り除くよう正式に要請した。バックストップは「非民主的で英国の主権に反し、ベルファスト合意で実現した微妙なバランスを損なう」と主張。これを離脱協定から排除する一方で、離脱後の移行期間中に代替措置を講じることを明記するよう提案している。
同首相は、バックストップが発動すれば英国はEUとの関税同盟に縛られ、英領北アイルランドでは単一市場ルールの大部分が適用されると指摘。北アイルランドとグレートブリテン島の間に規制上の国境を引くことになるものの、英国は一方的にこれを脱することができず同国の主権と一致しないと訴えた。また、北アイルランド住民は自らで変えることのできない法規を適用されることから、民主主義に反するとも主張。この結果、1998年に北アイルランド紛争の終結と和平実現に向けて結ばれたベルファスト合意のバランスが崩れる恐れもあるとして、離脱協定からバックストップを排除するよう求めた。
これに対して、トゥスク大統領は「バックストップは代替措置が見つかるまでの間、厳格な国境検査を回避するための保険的な措置」と指摘。「これに反対しながら現実的な代替措置を示さない人々は、口ではそれを認めていないものの、国境の復活を支持していることになる」との見方を示した。また、欧州委員会の広報担当官も「同首相の書簡は法的に運用可能な解決策を示していない」と批判している。
EUはかねて、政治宣言の再交渉には応じるものの、バックストップを含む離脱協定自体の内容変更には一切、応じない姿勢を示している。ジョンソン首相は21日にベルリンでメルケル首相と、22日にはパリでマクロン大統領と相次いで会談する予定。[EU規制]
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