英国のジョンソン首相は7月31日、就任後初めて訪れた英領北アイルランドで、同地域の主要5政党と会談した。前日夜には親英強硬派の民主統一党(DUP)のフォスター党首と非公式の会談を実施。同首相は自治政府の組閣に向けて「力の及ぶ限り」支援するとしている。BBC電子版などが伝えた。
フォスター党首によると、両氏は会談で、欧州連合(EU)離脱協定を巡り合意を取り付けたい意向を確認。これに向けた交渉には、アイルランド政府と欧州委員会が関与すべきとの考えを示した。また、合意なき離脱も話題に上ったとし「EUは全員が納得できる協定に注力するのではなく、英国を分断させようとしている」と批判した。
ジョンソン首相はこの日、まずは親アイルランドのシン・フェイン党のマクドナルド党首と会談した。マクドナルド党首はその後の会見で「ジョンソン首相にはDUPの使い走りになってはならないと進言した」と説明。全ての政党を公平に扱うという同首相の発言を信じておらず、DUPは今回の非公式会談を通じて、大多数の住民の権利を否定し、見解を踏みにじり続けていると糾弾している。
北アイルランドでは、1998年に北アイルランド紛争の終結と和平実現に向けて結ばれたベルファスト合意に基づき、自治政府の閣僚ポストを親英派と親アイルランド派の主要政党が分け合うことになっている。しかし、2017年1月にDUPとシン・フェイン党の不和から政権が崩壊。同年3月の北アイルランド議会選挙後に行われた組閣協議も決裂し、自治政府の不在状態が続いている。
10月31日までの離脱を強調するジョンソン首相はかねて、EUとの離脱協定で合意に至るためには、バックストップ(安全策)条項を撤回する必要があるとの考えを示している。DUPもこれに賛同しているが、アイルランドと英領北アイルランドの間の国境検査が復活する懸念がある。ジョンソン首相は30日、アイルランドのバラッカー首相との電話会談で「物理的な国境検査を復活させない」と約束する一方、EUがバックストップを撤回しない限り合意なき離脱も辞さない考えをあらためて強調。バラッカー首相は「期限までの再交渉は非現実的だ」との見方を示している。[EU規制]
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