欧州連合(EU)加盟28カ国は6月30日、ブリュッセルで開いた臨時の首脳会議(サミット)で、欧州委員会のユンケル委員長の後任などEUのトップ人事を再び協議したものの、合意には至らなかった。サミットは7月1日に再開されたものの、合意のめどが立たないまま昼前にいったん解散。協議は2日へと持ち越された。BBC電子版が伝えた。
EUのトゥスク大統領は、欧州委の次期欧州委員長候補として、欧州議会で第2党の中道左派・欧州社会・進歩連盟(S&D)を率いる欧州委のフランス・ティメルマンス第1副委員長(オランダ出身)を推したものの、中東欧諸国の首脳や中道右派が強く反対した。欧州委の後任人事は特定多数決方式で決定するため、EU加盟28カ国のうち21カ国以上が賛成するとともに、賛成した国がEU人口の65%以上を占めることが必要となる。
原則として、欧州委員長には最大会派の筆頭候補者が就任することになっており、先の欧州議会選挙で最多議席を確保した中道右派の欧州人民党(EPP)グループが推すマンフレート・ウェーバー党首(ドイツ出身)が有望視されていた。メルケル独首相もウェーバー氏を推していたが、マクロン仏大統領が同氏の政治経験不足などを理由に強く反対し、協議が振り出しに戻った経緯がある。
次期欧州委員長は11月1日に就任する予定。EUではこのほか、トゥスク大統領の後任や、モゲリーニ外交安全保障政策上級代表(外相)の後任に加え、欧州議会の新議長と欧州中央銀行(ECB)の新総裁の人事も決定する必要がある。これら五つの要職は、各出身国や性別、政治会派が平等に分かち合うことが理想とされる。ただ、先の欧州議会選挙では、2大会派のEPPとS&Dが共に後退し、リベラル派の欧州自由民主改革党(ALDE)および欧州緑グループ・欧州自由同盟と組んで過半数を確保したため、顔ぶれが多様化しトップ人事をさらに難航させている。
こうした中、トゥスク大統領は今回、妥協案としてティメルマンス氏が欧州委員長に、ウェーバー氏が欧州議会の新議長に就任する案を提示していた。ウェーバー氏はALDEのフェルホフスタット党首と任期を分け合う可能性もある。EUの外相候補には、欧州委のべステアー競争担当委員(デンマーク出身)またはベルギーのミシェル首相を推している。一方、トゥスク大統領の後任候補には、欧州委の各種委員を歴任し、現在は世界銀行の最高経営責任者(CEO)を務めるクリスタリナ・ゲオルギエワ氏(ブルガリア出身)の名が挙がっている。[労務]
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