ジョンソン前外相は29日、ロンドンのウエストミンスター治安判事裁判所によって出廷を命じられた。2016年の国民投票に向けた欧州連合(EU)離脱派のキャンペーンで、同氏が英国のEU拠出金について虚偽の発言を繰り返したとの刑事訴追を、同裁判所が受理したため。与党・保守党の党首選で有力候補と目されるジョンソン氏にとって、大きな痛手となる可能性もある。
ジョンソン氏をはじめとする離脱派は、国民投票に先立つキャンペーンで、英国はEUに1週間当たり3億5,000万ポンドを支払っており、これを国民医療制度(NHS)などに回すべきと主張。このスローガンを掲げた赤いキャンペーンバスは離脱派の1つの象徴となっていた。
今回の訴追は、政治活動家のマーカス・ボール氏が個人で行ったもの。同氏は、ジョンソン氏が国民投票前と2017年の総選挙前の2度のキャンペーンで、この虚偽の発言を意図的に繰り返し国民に誤解を与えたとして、公職者による不正容疑で刑事訴追した。ジョンソン氏の弁護人はこれを「国民投票の結果を台無しにするための宣伝行為」と反論したが、ウエストミンスター治安判事裁判所の判事は、「原告は、この発言が虚偽であることを被告が知っていた証拠が十分にあるとしている」とこれを受理した。今後、同裁判所での予審を経て、刑事法院で裁判が行われる見通し。ただ、同氏側が英高等法院に出廷命令の見直しを要請したり、検察当局が訴追を引き継いだ上で、証拠に欠けるとして中止する可能性も残る。
英政府統計局(ONS)の2017年10月の発表によると、英国が2016年に支払ったEUへの純拠出金は94億ポンドで、1週間当たりでは同氏らが主張した3億5,000万ポンドの約半分に過ぎなかった。この数値を巡っては、英国独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ元党首が国民投票翌日に「間違いだった」と撤回して批判を浴びたほか、2017年9月には、官公庁の統計を監督する英統計理事会のデビッド・ノーグローブ会長が、この主張は「誤解を生んだ可能性がある」と指摘し、ジョンソン氏がその後もこの数値を使用し続けていることに失望を表明していた。
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