欧州連合(EU)は10日、臨時の首脳会議(サミット)を開き、英国が要請した6月末までの離脱延期について協議した。メイ首相はEU加盟27カ国の首脳陣を前に、約1時間にわたって離脱延期の必要性を訴えた。トゥスクEU大統領が延長期間について最長1年とする案を示唆していた中、メイ首相は英下院で離脱協定が可決した場合に期限を前倒しできることを前提に、長期の延期を受け入れることにも前向きな姿勢を示したという。
EU首脳陣は、メイ首相の演説後、英国の離脱延期を巡る草案の修正にとりかかった。今後、EUの意思決定の過程における英国の役割を限定的にする内容や、ブレグジット後の諸問題を協議する際、英国抜きでもEU加盟国が会合を開けるようにする内容などが盛り込まれた。草案では離脱延期の日時が「XX.XX.XXXX」とのみ記されており、延期の期間が最も重要な争点となっていることが伺える。
英国は現時点で4月12日に離脱することになっているが、英下院でまだEU離脱協定の承認が得られていないため、このままでは合意のないままEUを離脱することになる。メイ首相はこれを避けるため離脱延期の申請を決めた。ただ、5月下旬の欧州議会選挙への参加を回避するため、延長期間は6月末までとし、その間に下院でEU離脱協定の承認を取りるける方針。これに向け、先には最大野党・労働党との協議にも着手した。
トゥスク大統領は9日、EU加盟各国の首脳への書簡で、英国の合意なきEU離脱を避けるため、メイ首相の離脱延期要請を検討するよう提案。ただ、6月末までに英下院で離脱協定が承認される見込みは薄い上、この日までの延期を認めても今後さらに短期延期が繰り返される恐れがあると指摘。このため、延長期間を最長1年とし、英・EUの議会が離脱協定を承認した時点で延期を打ち切る案を示した。
ただしこの場合、英国は欧州議会選挙への参加を義務付けられる。また、トゥスク大統領は延期の条件として、英国がEU加盟27カ国に協力し続けることを求めている。これは、離脱の決まっている英国が予算案などの重要案件に拒否権を行使することを避ける狙いで、メイ首相は書面での約束を求められる可能性もある。また、メイ首相とEUが合意した離脱協定の再交渉には一切、応じないとしている。ただ、将来的な英・EU関係についての政治宣言はこれには含まれていない。
一方、英国では11日に再び、政府と労働党の間でブレグジット方針を巡る協議が行われる。ただ、労働党の広報担当者は10日、「われわれと政府のアプローチには明らかに大きな違いがある」とコメント。政府に譲歩の姿勢が見られないとしている。
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