メイ首相は3日、欧州連合(EU)離脱を巡る行き詰まりの打開に向け、最大野党・労働党のコービン党首との協議を開始した。将来的な対EU関係で同党と合意に達することにより、下院で離脱協定を可決させる意向。労働党はかねてEUと関税同盟を結ぶことなどを求めており、同首相がどこまで譲歩するかが焦点となる。
英下院では離脱協定が3度にわたり否決され、これに代わるさまざまな選択肢もすべて過半数の支持を得られずにいる。英国は4月12日までにEUに新方針を示してさらなる離脱延期を要請しない限り、この日に合意のないまま離脱することになっている。メイ首相は2日、こうした事態を避けるため、野党の協力を得て下院で可決の見込める新方針を探るとともに、EUにさらなる離脱の延期を要請する方針を打ち出していた。
これに対しコービン党首はこの日、「首相が下院の意見を受け入れ、歩み寄りの姿勢を示したことを歓迎する」との考えを示した。労働党はかねて独自のブレグジット方針として、EUと恒久的な関税同盟を結ぶことや、EU市場へのアクセス確保、消費者や労働者、環境の保護でEUと足並みをそろえることを求めている。
同党首は会談後、メイ首相の立場に「想定した以上の変化はなかった」とコメント。「有意義だったが、結論には到達しなかった」とし、協議は継続するとした。保守党と労働党は共に交渉チームを結成しており、4日には全日にわたる協議の場が持たれる予定だ。
メイ首相が同党に譲歩する姿勢を示したことを受け、与党・保守党内では合意なき離脱を求めていたEU離脱強硬派を中心に不満が高まっている。この日朝にはナイジェル・アダムズ・ウェールズ担当閣外相が、首相の方針転換に抗議して辞任。ジョンソン前外相も「メイ首相はブレグジットの仕上げを労働党に託した」と強く批判している。
メイ首相は4月10日の臨時EU首脳会議(サミット)で、離脱延期を要請する方針。ただ、5月23~26日に行われる欧州議会選挙に英国が参加することを避けるため、短期の延期にとどめる方針。これに対し、欧州委員会のユンケル委員長はこの日、「4月12日までに英下院が離脱方針を可決すれば、5月22日までの離脱延期を認める」とした上で、「4月12日までに同協定が可決されなければ、短期の延期は不可能」との考えを示している。
一方、英下院ではこの日、合意なき離脱を回避するための法案が審議された。これは労働党のイベット・クーパー議員が2日に提出していたもので、メイ首相に対し直ちにEUに離脱延期を申し出るよう求める内容。下院の第2読会は賛成315票、反対310票と5票差で通過した。下院で可決されれば、4日に上院に法案を送る方針だ。
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