メイ首相は2日、欧州連合(EU)離脱を巡る行き詰まりを打開するため、最大野党・労働党のコービン党首と将来的なEU関係について協議する方針を明らかにした。野党の協力を得て下院で可決の見込める新方針を探ることにより、合意なき離脱を回避する考え。与党・保守党内の離脱強硬派の圧力をついに退け、アプローチを大きく転換した格好で、ブレグジットの行く先を左右することとなったコービン党首の出方に注目が集まっている。同首相はこれに向け、EU離脱を現行の期限である4月12日からさらに延期する方針も示した。
英下院では1日、メイ首相がEUと合意した離脱協定に代わる選択肢を探るための2度目の「示唆的投票」が行われたものの、関税同盟案や国民投票案を含む4案のどれも過半数の支持を得られなかった。英国は4月12日までにEUに新方針を示してさらなる離脱延期を要請しない限り、この日に合意のないまま離脱することになっている。
これを受け、メイ首相は2日朝から対応を協議するための閣議を招集。7時間以上に及ぶ異例のマラソン閣議の後、記者会見に臨んだ。同首相はその中で、「合意なき離脱の回避を目指す」と明言。コービン党首と合意できる離脱方針を模索する一方、合意がまとまらなければ下院に複数の選択肢を示し、政府主導で示唆的投票を行う考えを示した。投票の結果には従うとしている。
同首相はこれに向け、4月10日のEU首脳会議(サミット)でさらなる離脱延期を要請する。ただ、欧州議会選挙への参加を避けるため、延長期間は最小限にとどめ、5月22日までには下院で離脱協定を可決した上でEUを離脱する方針。ただ、EUはかねてさらなる離脱延期の条件として、具体的な新方針の提示を求めている上、その場合には欧州議会選挙への参加も必要になるとしている。このため、英国が新方針の定まらないままさらなる短期延期を求めることを、EU側が受け入れるかどうかが今後の焦点となる。トゥスクEU大統領はメイ首相の記者会見を受け、「最終的な結論はいまだ不明だが、忍耐強く見守る必要がある」と一定の理解を示したものの、離脱延期の承認にはEU加盟27カ国の全会一致での支持が必要となる。
メイ首相のソフト路線への方針転換を受け、かねて同首相に4月12日に合意のないまま離脱することを求めていた保守党内の離脱強硬派が猛反発することは必至。閣内のEU離脱派の今後の出方にも注目が集まっている。
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