英下院で1日夜、メイ首相が欧州連合(EU)と合意した離脱協定に代わる選択肢を探る2度目の「示唆的投票」が行われた。ソフト路線のブレグジットや国民投票の再実施など議員から提出された4件の選択肢の採決を実施したが、前回に続いて全ての案が反対多数で支持を得なかった。これまでにメイ首相の離脱協定が議会で大差で否決されたのに比べ、賛否は極めて拮抗(きっこう)したが、EU離脱の新たな道筋を見出すことはできず、またしてもこう着状態から抜け出せなかった。
4件の選択肢のうち賛否が最も拮抗したのは「関税同盟案」で、賛成273票、反対276票とわずか3票差での不支持となった。これは英・EU間で恒久的かつ包括的な関税同盟を結ぶことを離脱協定に明記する案で、EU単一市場には参加しない内容。最大野党・労働党が支持を表明したほか、一部閣外相が賛成票を投じるなど広く支持を集めたものの、過半数の支持は得られなかった。
EU離脱協定が下院で承認された場合、国民投票でその是非を問う「確認のための国民投票案」は賛成280票、反対292票でやはり過半数の支持は得られなかったが、12票差とこちらも僅差だった。
EU離脱後も関税同盟とEU単一市場にとどまる最もソフト路線のブレグジット案である「共通市場2.0案」は、過半数の支持を得るとの下馬評が高かったが、賛成261票、反対282票と21票差で不支持となった。これは与党・保守党のニック・ボウルズ議員らが提出した動議で、別名「ノルウェー型プラス案」と呼ばれる。EU離脱後に欧州自由貿易連合(EFTA)に再加盟し、欧州経済領域(EEA)とEU単一市場にとどまることにより、EUとのヒトやモノの移動の自由を維持する内容。労働党とスコットランド独立党(SNP)が正式に支持を表明し、前回より賛成票は大幅に伸びた。ボウルズ議員は投票結果を受け、「保守党は譲歩を拒んだ」と痛烈に批判した上で、離党の意向を明らかにした。
離脱協定が可決されなければ議会が合意なき離脱かEU条約50条に基く離脱通告撤回のいずれかを選ぶ「議会至上案」は賛成191票、反対282票と大差で不支持となった。
英国は4月12日までに、別の離脱方針を模索するためにEU離脱の長期延期を求めるか、合意なしでのEU離脱を選択する必要がある。バークレイEU離脱相は採決後、全ての選択肢が不支持となった結果を踏まえて、2日に閣議を開き今後の政府の方針を決めると説明。合意を伴った離脱をするためには打開策を見つけることが残された「唯一の選択肢」だとした上で、「下院が週内に何らかの離脱協定を通すことができれば、欧州議会選挙への参加を避けることはまだ可能だ」と呼び掛けた。
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