欧州連合(EU)は21日、ブリュッセルで首脳会議(サミット)を開き、英下院で来週にEU離脱協定が可決されることを条件に、英国のEU離脱を3月29日から5月22日に延期することを認めることで合意した。否決された場合でも、4月12日までの延期を認め、英国にその後の方針を示すことを求めている。実質的に英国に「無条件での延期」を認める形で、差し迫った合意なき離脱のシナリオを回避することが優先された。
メイ首相は6月30日までの延期を要請していたが、EUは同首相が5月下旬に予定される欧州議会選挙に参加しない方針を打ち出していることから、選挙が始まる5月23日を越えての延期を認めなかった。しかし、英国が欧州議会選に参加することで合意すれば、さらに数カ月間の長期延期も可能とみられている。
当初は午後7時(現地時間)にトゥスクEU大統領とユンケル欧州委員長による記者会見が予定されていたが、延期の期間などを巡って議論が長引き、最終的な結論は午後11時半を回ってようやく下された。
メイ首相は来週に下院で同協定を巡る3度目の採決を行う方針。EUによる初期段階の草案では、これが再び否決された場合、離脱の延期は認められないとの厳しい条件だったが、最終的には否決された場合でも約2週間の延期を認める柔和な姿勢に転換した。この修正案は、ドイツとフランスが後押ししたとされる。
英国内では、離脱協定には野党に加え、与党・保守党内のEU離脱強硬派や、同党に閣外協力するはずの北アイルランド・民主統一党(DUP)もなお強く反対しており、この日の時点で可決のめどは立っていない。 マクロン仏大統領はサミットに先立ち、「英下院での同協定否決は、合意なき離脱をもたらす」とコメント。一方、メルケル独首相は、「ぎりぎりまで秩序あるブレグジットの実現に努めるべきだ」と話した。
メイ首相は20日夜のテレビ演説で国民に対し、「人々が内輪もめや政治的駆け引きにうんざりする気持ちはよくわかる」と共感を示した上で、「議会は反対するばかりで選択しない」と強く批判。「下院議員は決断を下すべき時だ」と訴え、来週の採決での支持を訴えた。ただ、議会だけの責任を問い、国民と対立させるような発言には反発を示す下院議員も多く、支持を獲得する上で逆効果だったとの指摘もある。
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