英下院(定数650)は12日、欧州連合(EU)離脱協定を反対391票、賛成242票で再び否決した。メイ首相は前日夜までEU側との交渉を続けてアイルランド国境問題の「バックストップ(安全策)」を巡る変更を取り付け、離脱案を支持するかブレグジットが撤回されるリスクをとるかを迫ったが、バックストップに恒久的に縛られることを懸念する議員たちを納得させるには至らなかった。2度目の大敗を喫し、メイ首相のブレグジット戦略や首相としての立場は強いプレッシャーにさらされている。
メイ首相は採決に先立つ11日夜、欧州委員会のユンケル委員長と直接話し合うため、欧州議会がある仏東部ストラスブールに急行。11時間に及ぶ交渉の結果、離脱協定に関する法的拘束力のある共同措置を設け、EUが英国をバックストップにとどめようとした場合に英国が異議を申し立てることを可能にしたほか、移行期間が終了する2020年12月までにバックストップを代替措置に置き換えるとの共同宣言を、離脱協定に伴う政治宣言に付帯することで合意していた。
同首相は採決に先立つ演説で、バックストップについて「最善の変更を確保した」と強調。「EUとの合意案を支持するべき時が来た」とした上で、「この案を支持しなければ、ブレグジットが実現しない恐れがある」と訴えていた。
保守党の離脱強硬派議員から成る欧州リサーチ・グループ(ERG)の中には、同協定の支持に回る議員もみられた。しかし、英政府に法的助言を行うコックス法務長官がブレグジット後に英国がバックストップに縛られる法的リスクは「なお変わっていない」との見解を示したことを受け、保守党に閣外協力する北アイルランド・民主統一党(DUP)とERGは正式に反対を表明。1月に行われた1度目の採決時ほどではなかったものの、離脱案は再び149票の大差で否決された。保守党からの造反は約75票で、前回の118票からはやや減った。
最大野党・労働党のコービン党首も「離脱協定も政治宣言も、実際には何一つ変わっていない」と離脱案を批判し、党として反対に回った。投票結果が出た後には、メイ首相に対して解散総選挙を実施するよう求めた。
なお、下院議員からは10件の修正案が提出されていたが、バーコウ下院議長はいずれも採決の対象として選ばなかった。
EU離脱協定が再び否決されたことを受け、下院では13日、離脱期限の3月29日に合意なしに離脱するべきかどうかの採決が行われる。これが拒否されれば14日に、離脱延期の是非を問う採決が実施される。これが可決された場合、英政府はEUに離脱の延期を申し入れることになる。ただ、EUがどの程度の期間延長に応じるかは不透明。また離脱期限が延期されても、EU側はもはや離脱協定の再交渉には一切応じない姿勢を示している。
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