英下院(定数650)は14日夜、現行の欧州連合(EU)離脱方針への支持などを求める政府動議を賛成258票、反対303票で否決した。合意なき離脱の回避を嫌った与党・保守党内の強硬離脱派が投票を棄権する形で造反した。メイ首相はアイルランド国境の「バックストップ(安全策)」の変更を巡ってEUとの協議の進展を目指しているが、英国内が一枚岩になりきれない現状を受け、EU側との交渉における首相の立場はさらに弱まりかねない。
議会は、1月29日に議会で可決された「バックストップの変更」「合意なき離脱の回避」という修正案を盛り込んだ政府の現行の離脱方針を支持し、バックストップを巡るEUとの協議が続いているとする動議に関する採決を実施した。保守党の強硬離脱派は動議に賛成すれば、合意なき離脱の回避を認めることになるとして、審議の段階から反対の意向を示していた。
最大野党・労働党のコービン党首は採決の結果を受け、「メイ首相のブレグジット戦略は失敗したと認めるべきだ」と指摘した。労働党はかねて、メイ首相は時間稼ぎをして、離脱協定を認めるか、合意なき離脱をするかを選択するよう議員に期限ぎりぎりで迫るつもりだと批判している。メイ首相は議場に姿を現さなかった。
政府動議に対しては、与野党の議員から10件の修正案が提出され、この中からバーコウ下院議長が選んだ3件のうち、提案が引き下げられた以外の2件の採決を行った。最大野党・労働党のコービン党首は、2月27日までに離脱協定と法的拘束力のない政治宣言両方の受け入れ是非を巡る下院採決を行うか、EUとの基本合意はもう存在しないとの声明を発表し、今後の政府方針に関する動議の審議と採決を行うよう提案。この修正案は賛成306票、反対322票で否決された。スコットランド独立党(SNP)は離脱日を少なくとも3カ月延長するよう求めたが、これも反対多数で否決された。
なお、メイ首相は先に、バックストップに関して英国側の希望に沿う変更が確保でき次第、再び離脱協定の採決を行う方針を下院に説明。離脱協定に対して過半数の賛成が得られなかった場合、2月26日に新たな政府方針を発表し、翌27日にその方針に対する修正動議の採決を行うとしている。
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